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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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飛鳥 童
Warabe Aska
絵本作家・アーティスト
大きな窓から、雪に覆われたトロントの景色が一望できるダウンタウンの仕事場で、現在『点』をテーマにした絵本の制作に取り組む飛鳥氏。絵本作家として数々の賞の受賞経験を持つ同氏に、『飛鳥童の世界』を語ってもらった。

飛鳥氏の過去の作品を見せてもらうと、カナダに移住する前と後では作品のタッチがかなり違うことに驚かされる。鮮やかな色彩で自然とイマジネーションの融合を描く最近の作品とは対照的に、初期の作品はたれ目にダンゴ鼻の人物が描かれた、どこかコミカルな作風だ。
いずれも温かみがあって楽しく、飛鳥氏らしい作品であることには変わりないのだが、ちょっと異色なのが、飛鳥氏が文・絵を手掛けた73年出版の『80日間日本一周―フーテンすってんてん』(アリス館)という旅行記。

「実はこの時、アメリカのデザイン事務所のパートナーになる仕事が決まって、渡米する予定だったんです。ところがベトナム戦争の影響でビザがおりなくて、出発の3日前に中止になってしまって。送別会もしてもらって、餞別ももらっていたので、何となく東京に帰りづらくなってしまってね(笑)。

航空券をキャンセルしたお金で中古のホンダを買って、あちこちで野宿しながら日本を一周しました。資金がなくなると、ガス代とインスタントラーメン代を稼ぐために、地元のチラシの仕事をもらったりして。土地の人々との触れ合いもたくさんありました。これはその時の話をかいたものです」その後、本・雑誌の挿絵の仕事では充足感が得られなくなった飛鳥氏は、3年間ヨーロッパを放浪する。そして、個展を開いたロンドンのマデン・ギャラリーの支店がトロントにあったことがきっかけでトロントに移り住む。

カナダに来て空の面積の大きさに驚いた飛鳥氏。日本とはあまりにも違うトロントの景色を前に、初めは何も描けなかったという。

「マイナス25度の日に、何か面白い光景が見られるかなと思ってハイパークに行ってみたんです。そしたらあまりの寒さに、池でスケートをやっている人の吐く白い息が長くたなびいていたんですね。それを見て、『その白い息が空の雲に昇って行って、雲の中には人々の会話や動物の鳴き声が詰まってるんじゃないか』というイメージを受けたんです。そこで、カナダの空の、この空間こそが大事なんだって解って、それからは大地と空の広がりが僕のイマジネーションの原点になりました」

飛鳥氏の作品では、自然の風景の中に想像の世界が構築されている。そのイマジネーションの豊かさが、彼の作品の大きな魅力でもあるのだ。
「自然界からイマジネーションを得ているんです。例えば枯れ木を見ていると、根っこが春のために一生懸命養分を吸っている様子が頭に浮かんできます。それで冬の絵の中に赤い木を描いたりするんです。
あまりメッセージ性とかは意識したくないので、それを見た人が、『身近な自然の中にこんな想像の世界があるんだ』って思ってくれたら嬉しいですね」

トロントに移住した飛鳥氏の活動場所は、ギャラリーから出版界へと移行していく。
「本を出版すれば、不特定多数の人にみてもらえるし。僕はそういう大衆的なアートでいいと思っています」
そう言って飛鳥氏は、各国の言語に翻訳された『氷上ルリの大冒険』を見せてくれた。高円宮妃殿下によるストーリーに合わせて飛鳥氏が絵を描いたこの絵本は、現在12ヶ国語に翻訳され、15ヶ国で出版されている。

「新宿伊勢丹で展覧会をした時に妃殿下が家族連れで来てくださったことがあって、その時に1時間半もお話ししたんです。その数年後かな、妃殿下からお電話があって、『氷山の話ができちゃったんです。イラストをお願いできますか』って。それから国際電話で1時間、ストーリーを話してくれたんです。電話代は大丈夫かなってこっちが心配になりました(笑)」
飛鳥氏が文章に合わせて絵を描いたのは、この作品が20数年ぶり。

「絵本の95%は、出版社が文章に合ったイラストレーターを選ぶというやり方ですが、僕の場合は絵を先に描いてから、それに合った作家さんに依頼するというやり方でやらせてもらっています。僕は絵本というのは絵が主体だと思うんです」

そんな飛鳥氏が現在取り組んでいるのが、『点』をテーマにした幼児向けの本。自然や可愛い動物たちが登場し、ちょっとした仕掛けもある遊び心満載のこの本では、韻を踏んだ楽しい文章も飛鳥氏が手掛けている。
「上海の幼稚園を訪ねた時に、大気汚染がひどくて、子供達は虹を見たことがないって聞いたんです。それがずっと頭にあって、子供たちに自然界から感動を受ける体験を、もっといっぱいして欲しいと思いました」
そう語る飛鳥氏の口調は、彼の描く絵のような温かさと優しさに満ちていた。

インタビュー/後藤 美穂

飛鳥 童 【Warabe Aska】
1944年、香川県生まれ。県立高松高校図案科で商業デザインを学び、在学中に応募したコンペでは受賞多数。自動車会社の宣伝部、フリーランスの広告デザイナー・挿絵画家を経て、73年から3年間ヨーロッパを放浪。79年よりカナダに移住し、84年に初めて描いた絵本『Who Goes to the Park』がトロント出版文化大賞を受賞する。
その後も、鮮やかな色彩感覚とイマジネーション溢れる作風が評価され、世界各国で数々の賞を受賞。97年には高円宮妃久子殿下より『氷山ルリの大航海』の制作依頼を受ける。現在トロントのアトリエで、今夏に出版予定の新作、『てんてん・なんてん・なんのてん?(英題:Dots do lots)』を執筆中。

Aska's Sea Creatures(ダブルデイ社)
太陽を追う海の生き物たちを鮮やかな色使いで描いたこの絵本は、あちこちに隠し絵があり、大人も子供も楽しめる。素敵な詩で作品に彩りを加えるのはカナダ出身の詩人デイビッド・デイ。
<作品リスト
【73年】旅行記:80日間日本一周―フーテンすってんてん(アリス館)
【81年】創作絵本:タンポポ・タン(リブリオ出版)
【82年】創作絵本:ピーヨロロ・オーヨロロ(タンドラ出版)
【84年】Who Goes to the Park
(タンドラ出版)
【85年】トロント出版文化大賞受賞、市民栄誉賞受賞、86年ライプチッヒ国際図書展栄誉賞受賞、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選
【85年】『早春のメロディ』がユニセフ・グリーティングカードに採用される
【86年】Who Hides in the Park(タンドラ出版)
【90年】Seasons(ダブルデイ社)
―国際スタジオマガジン賞金賞受賞
【91年】Aska’s Animals(ダブルデイ社)―チェコ・ブルノ・グラフィック・ビエンナーレ展銀賞受賞、
【92年】ボローニャ国際絵本原画展入選
【93年】アース・デー公式ポスター制作
【94年】Aska’s Sea Creatures
(ダブルデイ社)
【98年】氷山ルリの大航海
(講談社・高円宮妃殿下作)
【99年】『流れ星のクリスマス・ツリー』がユニセフ・グリーティングカードに採用される。ワンダフルライフ 地球の詩(小学館) その他作品、受賞多数。

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