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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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山口 寿男
Hisao Yamaguchi
在トロント日本国総領事
今回は新年号特別企画として、トロントに住む邦人の代表である山口総領事に今年(2005年)の方向性についてお話を伺い、その素顔に迫った。

ー建築学部から外交官に。まずはそのユニークな道のりについて伺った。
「建築家を目指してたことは事実です。当時は東京オリンピックがあり、丹下健三さんとか、素晴らしい建築家が建てた立派な建物に刺激を受けたんですね。しかし、建築をしばらく勉強してると、作品の良し悪しが判ってくる。苦労して作品を作り、パッと横を見るとその人の方がずっと良いと判るんです。だから『あぁ、この世界での大成はないな』と(笑)。それで、まぁ、方向転換を考えました」

ーケンブリッジ大学への留学。カルチャーショック等はあったのでしょうか。
「一番大きなショックは、海外で2年くらい生活すれば、考えてることが自然に英語でドンドン出てくるんじゃないかと思ってたんですけど、全然そうじゃなかったということです(笑)。母国語として英語を話す人と口頭で高レベルの議論をし、相手を充分説得できるか、という本当の意味での会話力はそんなに簡単にはつかない、とね」

ーその問題は克服されたのしょうか。
「それはね、その2年間の研修生活だけで終るのではなくて、そこが入り口。その後の人生の中でずっと努力し続けなければいけない。今、50代後半ですけれど、未だにどうすれば効果的に会話ができるか、いつも勉強してます。場合によってはメモしたりね。外務省生活30年ですけど、そういう努力は毎日欠かさずにやってきてます」

ー「総領事」として努力している事、気を付けている事等はあるのでしょうか。
「生まれも育ちも江戸っ子で率直なもんですから、思ったことを言ってしまうタイプなんですよね(笑)。でも、総領事となりますとね、もっと発言に注意しなければいけないな、と感じます。ま、そうすると何も言うことがなくなって面白くなくなっちゃうんですけどね(笑)。総領事の仕事は『日加関係をもっと拡大したい』など、非常に抽象的です。日加関係といっても経済関係から文化的交流までありますし、何をもってそれが『拡大した』と言えるのかも見えにくい。ですから、一つひとつ、文化面、経済面、政治面、と自分のやれることをして、何年後かに集大成として『あぁ、これだけ出来た』と納得できる、そういう仕事じゃないかなと思ってます」

ー総領事として、トロント日系社会とはどのように接していく予定でしょうか。
「日系社会は、総領事の立場からしますと非常に大事なコミュニティなんですよね。基本的には、その人達の為にどれだけ積極的な協力が出来るか、ですね。加えて色々教えていただきながら、やれることを見付けてするようにしたいと思ってます」

ー日系社会の一員である若者とはどのように関わっていく予定でしょうか。
「やぁ、ちょっと、一番難しい問題ですね(笑)。いつも家内からビシっと、とにかく若い人と話をしなさいと言われてるんです。そうしないとだんだんと世の中から遅れてしまう、と。年を取ると、人の考え方を柔軟に受け入れる能力が落ちてくるという面がありまして…。若い人と接して交流を持っていくというのは、努力目標ですね」

ー若者との交流も含めて、2005年の抱負などがあれば教えてください。
「首都はオタワですが、トロントは実質的に文化的、知的な中心ですよね。レベルの高い大学が集中しているので、それだけ知的コミュニティも充実している。そのコミュニティと国際問題について日本の立場とカナダの立場をぶつけ合っていきたいと思ってます。それから、日本では『北米=アメリカ』なんて感じがありますが、そうでないカナダを理解してもらいたいと感じてます。知的な面での交流を盛んにして、新しい総領事の存在理由をそういう面でも拡大していきたいと思っています」

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「こちらへ来て頑張ってる人に申し上げたいのは、本当の意味での力をつけて欲しいということですね。コミュニケーションの力をね。『日本人』は素晴らしい国民ですが、国際社会では凄く損してるなと感じます。その一番の理由が、コミュニケーションにあると思うんです。日本はあまり言葉で表現することを重視しない、むしろ『そんなのは察してくれよ』っていう世界でしょ。『そんなことまで言わせるのですか』っていうね。だけど、言わなくちゃ判らないのが国際基準。そこを乗り越えて国際的に活躍して欲しいと、そう思います」

インタビュー/岸 黄葉
山口 寿男
Hisao Yamaguchi
1946年東京都生まれ。早稲田大学建築学部卒。本人曰く「若干人生の裏街道をまわってから」創価大学を経て、28歳で外務省へ入省。ケンブリッジ大学での留学経験を活かし、世界各国で参事官や公使などを務める。イラクで起きた日本人人質事件では、政府と人質家族との橋渡し役として活躍。8月に在トロント日本国総領事に着任。日系社会の手助けをするだけでなく『カナダ』を理解してもらおうと意欲的に活動する。

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