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トロントの各界で活躍する著名人にインタビュー

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李 闘士男
Toshio Lee
李 闘士男
原作人気に頼らない映画版独特の良さを…
万人が楽しめる奇跡のコメディ映画
『デトロイト・メタル・シティ』

渋谷系ポップ・アーティストとしてデビューを夢見る少年が、悪魔系デスメタルバンド『デトロイト・メタル・シティ(通称DMC)』のギターボーカル、ヨハネ・クラウザーII世(通称クラウザーさん)としてインディーズデビュー、幸か不幸か大ブレイクしてしまう―。そんな抱腹絶倒のコミック『デトロイト・メタル・シティ』(原作…若杉公徳)の実写映画版がトロント国際映画祭で上映、それにあわせてトロントを訪れた映画版『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男監督にお会いすることができた。

「海外でのスクリーニングは初めてなんですよ。シュールな笑いがありますから、外国の方に分かっていただけるかどうか、楽しみでもあり、怖くもありますね」

こう話を切り出した李監督。

「主人公である根岸君のライバル、佐治君がカジヒデキさんをモチーフにしているところに、本物のカジヒデキさんが出ているとか、分からないでしょうね。ジーン・シモンズさん(ハードロックバンド『KISS』のベース、リードボーカル)が出ていらっしゃるのは分かってもらえるでしょうけど…。もともと、この作品のタイトルは、KISSの『デトロイト・ロック・シティ』をモチーフにしてますから、本家が出てくるのがまず、ギャグじゃないですか。だから彼にオファーを出したら、何を間違ったか『やっちゃう?』ということで(笑)、出演してくれたんです。交渉は割と短期間で決まりましたよ」

では、メインのキャスティングはどのように決められたのだろう。

「原作コミックのファンが多いので、キャラクターの造形に関しては原作にできるだけ忠実にしようと思っていました。漫画原作を実写にすると『え〜、違うよ』…ってことが往々にしてあるじゃないですか? そうすると、映画を観る前に期待を裏切ってしまうことになるんで、出来るだけ原作のイメージに近い人を選びました。その中で、お芝居ができて、楽しんでやってくれる人ですね。今回の松山ケンイチ君、松雪泰子さん、加藤ローザさんは最初の人選でしたから、僕は奇跡の映画だって言ってます。忙しい方々ばかりなのにタイミングが合い、今回、作品が出来上がったっていうのは、神様が降りてきた感じがしますね。ストーリーに関しては、原作がオムニバスなので面白いエピソードをやりながら映画のオリジナルストーリーを作った感じです」

監督が奇跡のキャスティングと語る役者陣。中でも、二面性を持っている主人公のキャスティングに関して詳しく聞いた。

「クラウザーさんが格好悪いとお話にならないんで、そこが軸になるんですけど、まあ、松山君なら出来るだろうというのが最初からありましたね。 映画を撮る前は、多分、議論の余地があったんでしょうけど、今は松山君以外のクラウザー、根岸君は、あり得ないと思っています。完璧でした。本当に完璧ですよ、松山君はすごいですよ。日本では、彼のことをカメレオン俳優って言ってますが、多分ね、そのレベルじゃないですよ。撮影中、クラウザーさんの格好してる時はちょっとした休憩の時間もクラウザーなんですよ。歩き方から座り方まで、完全に役が降りてきている感じですね。”役“っていうレベルじゃなかったです」

監督も脱帽、原作の若杉氏にも”これ以上はない“とお墨付きを頂いているという奇跡のキャスティング。それに加え、笑いだけではなく、少しホロリとさせるシーンを盛り込んだストーリーもコアな原作ファンだけでなく、多くの観衆を魅了した理由だろう。

「ホロリとする場面があったと思われますか? あぁ、それはこっちの術中にまんまとはまってますね(笑)。

あのシーンは映画のオリジナルです。オリジナルではないシーンでも、撮影に際して原作コミックはあまり読みませんでした。語弊があるかもしれないけど、映画版を作っているのにシーンが漫画のままだったらつまんないな、と思ったので、原作を途中から読まなくなったんです。一応、撮影現場には確認用として置いてましたが、結局、一度も見なかったですね。

というのは、漫画だからカット割りがあるじゃないですか。コメディをやる時は、”間“とかタイミングがすごく大事なので、カット割りは映画のモノじゃなければいけない。もちろんストーリーは覚えているし、原作のファンを裏切らないように、というのはありますけど、映画作品として面白く、原作を知らない人にも楽しんで見てもらえるものを…と思っていました。それには、どこまで原作に忠実にするか、どこまで良い意味で原作を裏切るか、という線引きを上手くするのが大切ですよね」

最後に、李監督にある噂についての真相を伺った。

「え(笑)? パート2ですか? パート2はね、違うキャスト、違う監督、違うプロデューサーがするっていう噂はありますね(笑)。全く違うチームでやるっていう…というより、やって欲しい。僕らはね、やりつくして、ひとつの青春が終わった感じなんですよ。燃え尽きているんです。それをもう1回奮い立たせようとするにはね、よっぽど綺麗な女の人に『もう一度…』って言われないとね(笑)

「カナダで綺麗な人にそう言われたら『シュア。マイ・プレジャー』ってすぐに言っちゃうんでしょ? (同席したプロデューサー)」

「(笑)。いや、それくらい大変だっていうことですよ」

この噂が真実になる日が来るのか?まずは近日発売予定のDVDを見ながら待つがよい(クラウザーさん風)。

(インタビュー/西尾 裕美)

李 闘士男
り としお
1964年、大阪府出身。テレビディレクター、ドラマ演出家、映画監督。日本大学藝術学部文芸学科在学中にドキュメンタリー番組の制作プロダクション会社でアルバイト。大学4年でディレクターデビュー後、とんねるず、タモリ、ダウンタウン、SMAPなどのバラエティ番組の演出家として活躍。99年には有限会社「リーライダーす」(www.lee-riders.co.jp)を設立。映画監督作に中島らも原作の「お父さんのバックドロップ」(04)、若杉公徳の大ヒット漫画を原作にした「デトロイト・メタル・シティ」(08)。
「デトロイト・メタル・シティ」公式サイト: http://www.go-to-dmc.jp

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