トロント・ダウンタウン、中華街の西に位置するケンジントンマーケット。小物や古着、安価で新鮮な野菜・魚介類を買い求める人で毎日ごった返す、人気のスポットだ。そのケンジントンマーケットから今回は、買物しているうちに「あ〜、おなか空いてきちゃった」という時にぴったりの、手軽で腹持ちの良いチリ風ミートパイ「ジャンボ・エンパナーダス」を紹介しよう。
エンパナーダの生い立ち
チリ料理として知られる事の多いこのエンパナーダとは、南米全域で普段から食事としても、スナックとしても食べられてるパイの事。肉、シーフードやフルーツなど、用いられる具材は地域によって異なり、その大きさも様々。パイ生地は小麦粉から作られ、一口サイズの揚げたものもあるが、オーブンで焼いたものは両手でしっかりと持たなければいけない程大きい。今回は店の名前にもなっている「ジャンボ・エンパナーダス」を目当てにやってきた。
味わう前に知っておきたいのがこの店の生い立ち。チリ出身の店長、アイリーンさんがトロントにやってきたのは20年以上も前。当時は週末のみ作っていた『本場の味エンパナーダ』が、トロント在住チリ人の間で評判となった。大きく増えた需要に応えるべく、ホットドッグ用のカートを用いて本格的にエンバナーダ販売を始め、その後ようやく構えたお店が、ここケンジントンマーケットにある「ジャンボ・エンパナーダス」という訳だ。
歯ざわり抜群なパイ
そこまで評判の良い一品とはどんなものなのか…期待に胸を膨らませ、チキン入りエンパナーダを注文。すると、こぶし二つ分程の大きさで、ずっしり重みのあるパイがやってきた。パイ生地の表面には、光沢と共に程良く焦げ目がついている。ナイフとフォークで切り分けると、嬉しい程にぎっしり詰まった具にご対面。しっとりした食感で歯ざわり抜群のエンパナーダを口に運ぶ。ハーブと一緒に炒められたチキンは、飾り気は無いがコクがあり、鶏肉そのものの旨みがパイの中にギュッと凝縮されている。まろやかなチキンの味わいが唾液腺を刺激し、具と相性ばっちりの厚めの生地も一緒にみるみるうちに腹を満たしていく。赤ピーマン、ゆで卵、オリーブがアクセントとなり、最後まで食べ飽きる事がない。少々刺激が欲しいなら、ピリ辛の特製サルサソースをかけていただくのも良いだろう。
アイリーンさんが長年エンパナーダを作り続けている理由は、「トロントの皆に、本場チリの味を楽しんでもらいたいから」。「学生さんでも気軽に来れるでしょ?」と手軽な価格で満足のいく質と量を提供している。次回のケンジントンマーケットでの買い物リストに、「ジャンボ・エンパナーダス」を加えるのをお忘れなく!
〈文・写真/TAKE〉
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