ちょっとユニークで美味しい店があると友人に勧められ、『Side Door Grill』にやって来た。ダンダス通りに面した扉を開けようとすると、「横の扉からお入りください」のサイン。店名通り、『サイドドア』から店内へ…。迎えてくれたのはオーナー兼シェフのマイケル。「開店して2年経ったのを機に改装して、メニューも見直したんだ。トロントらしく、色々な国の料理の良い所を組み合わせて、自分らしいアレンジをしたいと思ってね」。以前は中東の料理が中心だったというが、最近は食材やソース、香辛料など、どんどん新しいものに挑戦しているという。
フルーティーな香り、オリジナルのリブソース
ディナーメニューから、リブのバーベキューを注文した。この店を紹介してくれた私の友人は、このBBQソースにハマっているという。キッチンでは、マイケルがちょうど噂のソースをフライパンで温めている。色はちょっと濃い目の茶色、意外とサラッとしているようだ。フルーティーな香りがキッチンに広がる。「ニンニク、玉葱、トマト、アップルサイダービネガーに加えてザクロとタマリンドという果実を使っているよ」とマイケル。中東の肉料理にはザクロソースを使うものもあるが、マイケルのザクロソースはひと味違い、シェフ仲間で開発したオリジナルのソースだという。「塩、胡椒以外に、アンチョ、パシーオ、ワヒーオなど、5種類の香辛料を使っているよ」。聞き慣れない名前の香辛料だが、いずれもドライチリでメキシコ料理によく使われるものだ。ブイヨンとスパイスでじっくりと蒸して下ごしらえしたリブをBBQの網に乗せる。ジューというリブの焼ける音と、スモークで空腹感は絶頂に! ちょうどいい焼き目がついたころ、リブをフライパンに移し、ソースと絡めて出来上がりだ。
思い切りよく、手で掴んでかぶりつこう!
タワーのように積まれたリブが運ばれて来た。オリジナルソースには香辛料がたくさん使われていると聞いたが、『辛い』という感じでは無く、甘みとスパイスがとても良いバランス。リブの焼き具合も、外側には完璧な焼き目が入っているのに肉は柔らかく、ジューシーで骨離れもよい。ヘビーなイメージがあるリブだが、さっぱりしたソースのおかげで幾つでも食べられる。付け合わせはスイートポテトフライとグリーンパパイヤのサラダ。トロントのベストに選ばれたことがある彼のフライは、秘密のシーズニングで味付けされている。そしてパパイヤのシャキシャキとした食感と、タイ料理からヒントを得たというさっぱりしたドレッシングは、箸休めにピッタリ。主役のリブとのバランスが良く考えられた一皿だ。
近所の人で賑わうような、気取らない店を作りたくて『Side Door』と名付けたというマイケル。正面のドアではなく、台所の勝手口から入ってくるような、そんな気楽で居心地の良いレストラン、お気に入りの一つに加えたい。
〈文・写真/大村 絵理〉
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