カナダに来てからギリシャ料理に目覚めた私だが、肉、チーズ、そしてオリーブオイルのトリプルパンチで翌日も胃がもたれて…なんて失敗も多い。そんな失敗をしない、美味しいギリシャ料理が食べられると友人に紹介された「MUSA」は、ギリシャ人の母を持つエイミーが7年前にオープンしたレストラン。メニューは中東やヨーロッパ地方の料理が北米風にアレンジされているが、伝統料理「ムサカ」だけは特別な存在だという。エイミーの母、エリフィリが一家に伝わるレシピに改良を加え続けて完成させたもので、今も他のシェフに任せずに自ら作っている
”売り切れ御免!“の人気メニューだ。
母から娘へ、4世代に渡るレシピを元に・・・
中東、ヨーロッパ東部、南部でも広く食されているムサカだが、お国によって材料や作り方は違うそうだ。ギリシャ版はスライスして揚げたナス、トマト、ひき肉を何層にも重ねて敷き、その上にベシャメルソース(ホワイトクリームソース)をかけてオーブンで焼くのが一般的。エリフィリのレシピでは、薄めにスライスしたジャガイモや手作りのミートソースも加えるという。
2人でシェアできるくらいのサイズのムサカ、厚さもかなりある。まずは半分に切って断面をチェック。一番下の層がポテト、そして次がナス、真ん中にトマトソースで煮詰めたミートソース、そして再びナス、一番上がベシャメルソースの層。表面は良い感じにきつね色に焼けている。いかにも高カロリーという感じだが、最初の一口をいただいた感想は「軽い!」。ギリシャ料理でおなじみのオリーブオイルのヘビーさが全く感じられない。ベシャメルソースの層はとてもふんわりとしていてキッシュのような食感、自然な甘みもある。聞いてみるとやはりベシャメルソースに卵黄を加えているとのこと。そして隠し味はナツメグ。ヨーロッパではひき肉料理やお菓子に使われることが多い香辛料で、独特の甘い香りがある。彼女はこのナツメグをミートソースにも使用。他にもシナモンや、クローブなどの香辛料やパセリなどを使い、香り高く深みのある味わいのオリジナルソースに仕上げている。
常連は知っている?週の前半に売り切れ必至!
エリフィリのムサカが油っこくならない秘訣はナスを揚げないこと。通常のムサカではナスを揚げてから使うのだが、彼女のレシピでは薄くオリーブオイルを塗り、グリルするだけにしている。ナスは油を吸い込みやすいため、カロリーが気になる人は調理の仕方に要注意の野菜なのだ。
全ての材料を丁寧に重ねてオーブンで1時間半、低温でじっくり焼く。「ムサカはギリシャ人も大好きな料理だけど、やっぱりオイリーなので途中で食が進まなくなり、全部食べきれないのが残念。皆に最後まで食べてもらえるようなライトなムサカを作ろうと試行錯誤したの」というギリシャの母の味。これ目当ての常連客も多くいるという「MUSA」のムサカ。是非とも試して欲しいメニューだが、エリフィリが週の前半のみに作る限定料理。週の半ばには売り切れてしまっていることが多いというのでご注意を!
〈文・写真/大村 絵理〉
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