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コラムバックナンバー 2003年特集記事

006「僕と鞄と清太と節子」

photo長年連れ添い、苦楽を共にし、何処に行くのにもいつも一緒だったアイツが、突然異国の地であるトロントで僕の前から姿を消した。
「平成16年8月23日夜、僕の鞄が盗まれた」(清太風)

ほつれては縫いを繰り返すこと幾多、世の中に鞄は星の数程あれど、あれ程愛着のあった鞄は他には存在しないというほど愛用していた。と云うよりも、単純に愛していた。そんなアイツが何者かの手によって連れ去られ、二度と帰らない存在になってしまった。失って初めて、アイツに名前を付けるのを忘れていたことに気付いた。そんなアイツと一緒にもぅ何処へもお出掛けが出来ないことが切なく哀しく、また虚しい。

鞄だけでは無い。世界一書き易いシャーペン。そして、余りの描き易さに惚れ込み、3種類の太さの替芯を10本ずつ日本からわざわざ送って貰った、今迄のイラストにも大活躍していた世界一のボールペン達。家に残された替芯達は、カセットがいっぱいあるのに肝心の本体が壊れて使えないファミコン並に完全に意味が無い。(世界一でイラストはもぅ描けない)

盗んだ人間にとっては鞄に入っていたデジカメや電子辞書、現金等、金目の物以外は不要な品である。お気にのTシャツ+世界一の筆記具達+僕の命とも言うべきネタ帳2冊+これ等を大切に包んでいたアイツ=ゴミ。何が悔しいってこれ程悔しいことは無い。死んだ節子を火葬する為、炭を貰いに行き、そこのおっさんに「子供さんやったら、お寺の隅など借りて焼かして貰い。裸にしてな、大豆の殻で火ぃ点けると巧いこと燃えるわ! せやけど、ええ天気やなぁ〜!」と、完全他人事で笑顔で云われた清太の気持ちが痛い程分かる。と云うより全く同じ心境である。

火垂るの墓並のやり切れない思いを抱えながら、日付が変わった深夜に海外で初めての警察署訪問をすることにした。流石に緊張していた僕は頭の中で何度も"My bag was stolen!"と繰り返しまくっていた。硬い面持ちで少し油の切れ掛かった重いドアを押し開け中に入った。すると、奥に座っていた警官3人が一斉に「何やこんな時間に!」と言うかの如く僕を睨み付けた。僕の緊張はいよいよ最高潮に達し、自分で自分に先程まで何度も頭の中で繰り返していた言葉を言うように必死に働き掛けていた。「出来る! お前なら言える。てか、簡単やん! ただMy bag was stolen!って言うだけやん。さぁ言え!」。そして、声が上ずったりしないように注意し、深呼吸をして一度落ち着かせてから、自信に満ち溢れた感じで、僕は言った。

" I was stolen! "

最終更新日 : [09/15]
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