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コラムバックナンバー 2003年特集記事

007「続・僕と鞄と清太と節子」

photoそれは私の大切な「節子カバン」が盗まれた4日後のことであった。
チャリンコを漕ぎながらでも簡単に眠りに落ちてしまうぐらいの寝不足状態で、仕事前に、ある広場のベンチに腰を下ろし「そういやモーニング娘。って昔はたった5人やったんよなぁ〜」と妙なセンチメンタルに浸りながら、止める気満々のタバコと最高に相性の良い「モーニングコーヒー」を一人で飲み、何とか自分を目覚めさそうと心掛けていた。そして、何を見る訳でも無くただ通りを行き交う人をボーっと眺め、右手に持つコーヒーカップに視線を落とし、口に近付けようとしたとき、先程何の気なしに見た光景をもう一度見る必要がどうしてもある状況に追い込まれた。このときの私は、達人顔負けの素晴らしく芸術的な『二度見』リアクションであったに違い無い。

*二度見 笑いの基本方程式のひとつ。「何の気無しに見たものから一度視線を逸らし、我に返ったかのような表情で瞬時にそれを見直すこと」 加藤茶はこれの達人とされている。
民明書房刊「ドリフは世界一」より

私が再度見直さなければならなかったのは、通りを行き交う人間の一人、職務質問をする必要が全く無いほど判り易い典型的な『無職当然ホームレス』であった。町でホームレスを見かけるのは珍しいことではない。然し、彼の身なりが私に最高の二度見をさせた。

彼の履いているジーパンはそこら中に穴が開いている上、デニムとは程遠い色に変色しており、私がそれを使うと逆に一晩で5年分ぐらいの疲れを背負うのではないかと思う程汚物と化した掛け布団を、母親が赤子を抱くかの如く実に大切に両手で抱えていた。然し、彼の着ていたTシャツは渋く、偶然にも私も同じものを持ってい…っって、俺のやん! 俺のTシャツやん! 『節子カバン』に入ってた、俺が日本で買うたメモリアル限定販売のTシャツやん! 「頼む! 返してくれ!」と路上で土下座してでも頼みたかったぐらい、それは確かに私の物だった。が、最早私の物では無くなっていた。大切に着ていたシャツの首元は哀しいほどにダルんダルんになっており、綺麗なオレンジ色だったものが、数日間の路上生活と彼の汗とが科学反応を起こし、物の見事にウ○コ色になっていた。

それは実に、訳も話さず突然自分の元を去って行った為、気持ちの整理が付かず、未だ『好き』という感情を抱き続ける別れた彼女を、町で偶然見かけたが、あろうことか彼女が楽しそうにイチャつきながら腕を組んでいる相手が、自分よりもどう見ても不細工だったときのショックと酷似していた。
涙ながらに……「しあわせにな!」

最終更新日 : [10/06]
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