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コラムバックナンバー 2003年特集記事

018「僕と彼女が走ります(中編)」

photo僕は金の掛かる女性が嫌いだ。だからと云って女性に金を掛けるのが嫌いだということではない。持ち物全ての総額が、自分の死亡時に支払われる生命保険の額よりも多いと思われる女性とは、当然女性側としてもそんな安い命の男に興味などないであろうが、贈り物等で本気で喜ばそうとした場合、自分の命を犠牲にしてもまだ全然足らない気がして恐怖に近い虚しさが込み上げ、楽しく会話が出来そうに無い。

庶民中の低庶民の僕からすれば、ハンドバックからシャネルの財布が出てきた瞬間、たとえそれが昼間でも(敢えて標準語で)「そろそろ帰らないとご両親が心配されるんじゃない?」と云ってしまいそうになる。

然し、身分相応庶民派女性となると、誕生日やクリスマスには結構高額なプレゼントをきちんと贈り、女性からお返しのように受け取ったものが、自分の費やした額よりも明らかにに下回っていても何も言わず、心の中で「俺の価値はこんなもんか」と呟き、軽く落ち込んでみたりするぐらい懐の広い男なのである。

僕と彼女(茶 輪子)は、付き合い出して8ヶ月以上も経つというのに、未だ恋心は冷めやらず、デート中はいつも手を繋いでいる。しかも、それは普通のカップルのアツアツぶりなど比ではなく、僕達は常に両手を繋ぎあって移動する。そして、僕が彼女の両手を強く握ると、彼女はいつも「ドキッ!」としたように歩みを止める。

日本と違いカナダの寒さは人間だけを苦しめるものではない、輪子もその被害車の一人だ。彼女の足に穴が開くこと(注1)は普通に起こることだから、その度に病院に連れて行き医療費(注2)を払うのが僕の役目になるのは仕方無い。

ただそれが急激な気温の低下などに伴い、余りに頻繁に起こると、幼少期には理解出来なかった「そんな病弱な子に産んだ覚えは無い!」と母親が怒っていた気持ちが、そのまま自分の中に込み上げる。

単純に前と同じ風邪なら同じ薬を飲むだけで済む。ただそれが、明らかに前回よりも悪化した症状〔後ろ足に穴が開き、病院で治療を受けさせたにも関わらず、今度は寒さが原因で同じ後ろ足が完全に破裂し、筋肉移植(注3)が必要〕となると、先月「頭が割れる程痛い」と言っていた子が、今月「頭が割れた」と言っているようなもので「来月”頭が無くなった“とか言い出したら、裏山に埋めに行こう!」等と一切思わず、世の親達が唯一無二の子供を愛するが故、病院へ連れて行くのと同様に、治療を受けさせるしかない。

輪子は、貧乏家庭にとって病弱な子が重荷であるように、僕にとってお荷物以外の何物でもない。それでも、親子間以上の深い愛がそこにあるからこそ、彼女の手が凍結し、握り締めることが出来ず止まらなくなったときも、すぐに病院へ連れて行った。

そんな折、今度は前足が完全に潰れてしまった。仕方なく病院へ連れて行くと、医者が言った。「彼女の前足は皮膚と筋肉の両方の完全移植(注4)が必要です。医療費は…」
輪子は金の掛かる女である。今まで掛かった医療費総額$30、輪子自体が$40、今回の医療費請求$40、総計$110以上。

もっとええチャリ買えたやん!(注5)


注1…パンク 注2…自転車屋での修理費 注3…チューブ交換 注4…タイヤ自体の交換 注5…後の祭り―安物買いの銭失い。|後編に続く|

最終更新日 : [03/17]
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