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コラムバックナンバー 2003年特集記事

023「日本人をやとっチャイナ!(中編)」

photo就労における身形に対し多大なる恥じらいと嫌悪感はあったが、生活上の貴重な収入源である仕事をそうそう簡単に失う訳にいかない私は、誰よりも熱心に働いた。と云うよりも、求人欄に経験者優遇と在ったこともあり、化粧品の街頭実践販売の経験はあっても、給仕経験が一切無かった私の履歴書は実は少しだけ偽文書だった為、何としてでも経験者に見せなくてはならなかった。

英語力が飲食店に必ず1個はあるテーブル並みに『不安定』であったカナダ生活1ヶ月弱の私は、注文を取らぬよう言われていたが、注文をしてきた客に何と断っていいか分からず、メニューの中身も知らぬのに客が発した音を事細かに記していった。客が英語で言った注文を、店主の中国人に確実に理解して頂く為、丁寧にカタカナ表記し、本来英語で書いた注文票を提示するだけなのだが、私は店主の前に行き、それを成るべく英語らしく聞こえるように巻き舌満開で読み上げた。それが其処で働き始めて2時間後のことであった。

そういう積極的な仕事への取り組みが評価されてか、実に早い段階で研修期間を終えることが出来、肌を通り越し肉体で感じる程気に入られ、『通し』と呼ばれる10時間以上拘束の一日勤務を、週5日半勤務中の3日間こなしていくという、プロ野球で先発ローテーション入りを果たしたばかりの投手以上の扱いを受けるようになった。

学生の頃、バイト先のピザ屋の社長から随分気に入られ、何故か不動産のビラ撒きを頼まれるようになる程『働き者』で、深夜その店に忍び込み友人達の為にピザを作ろうとし「不法侵入及び窃盗」という罪名付き現行犯で捕まる程『働くことが好き』な私は、店主の注文には何でも素直に応じ、文句一つ言わず働いた。店の制服新調の為のデザイン考案や宣伝チラシ撒き等、かなりの時間外労働を無償で引き受けていただけでなく、給仕担当者は全て日本人で男性は私だけであり、調理人は全て男性なのに中国人であった為、裏口に搬入された大量の食材を地下の大型冷蔵庫に運ぶという重労働は、ほぼ常に私の仕事であった。それでも嫌な顔一つせず、裏口から店主に声を掛けられる度、「笑顔で応対・素早く対応」に徹していた。裏口では常に店主が「ここにカメラを付けないと…」と、店の防犯の甘さを自ら何度も指摘していたが、私にはそれ以上に別の日本人男性が必要としか思えず、『これも筋トレのうち』とプラス思考を巡らすにも限界を感じていた。

そんなある日、いつものように裏口から店主の声、己の肉体に喝を入れ、裏口へと向かう。然し一切の食材は其処に無く、何故か車に店主の姿。同乗するよう頻りに要求され、買出しの手伝いなのだと思い助手席乗り込んだ瞬間、身体が仰け反る程の猛スピードで発進。そして店主が言った…。
「お前の鞄が盗まれた…」(第6話参照)

翌々日、閉店後の店内に無償の時間外労働で防犯カメラの設置を手伝う私の姿。『今頃付けても遅いねんッ!』と心中で叫ぶも、それを口に出して云う勇気よりも英語力が無かった。
数ヵ月後、遂に日本人男性従業員が採用された。と思ったら、オカマだった。


先月立ち上げた新しいウェブ・サイトも段々充実してきました。まだ見てない人、アドレスはこちら。
http://www.nobmorley.com

最終更新日 : [06/05]
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