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コラムバックナンバー 2003年特集記事

025「何じゃコリァン?と云っチャイナ」

photoあるドラマが日本で韓国ブームを起こし、女性達が「韓国人なら誰でもいい」と悶え狂っていたとされる頃、1人の女性が新しい給仕担当としてやってきた。

店主は私を彼女の初日の教育者に任命したが、教育など一切必要無いと思える程、彼女は自信に満ち溢れており、新人には有り得ない妙な貫禄が備わっていた。彼女の風格は店主以上で、私など幕下以下になってしまうのではないかと思える程、横綱級であった。ほっそりとした体型の彼女だが、その顔は何処から見ても”朝青龍“だったのだ。肩から上がモンゴル出身大相撲第68代横綱”朝青龍“の彼女は、横綱が昔、日本への相撲留学生だったように、韓国からの留学生であった。

彼女と我々日本人との違いは、我々が客に隠れて喉の渇きを癒す為に飲む水を、店内の誰からも見える位置で堂々とペットボトルごと仁王立ちでラッパ飲みしていたぐらいのもので、茶碗を持たずに食べるという行儀作法の違い程ではなく、ラーメン屋が、どんぶりを持つ手の親指がしっかりとスープに漬かっていたことに文句を言う客に「他店が絶対真似出来ない当店秘伝のダシです」と言い切るように、「魚の味がオカシイ」と言う客に対し、実に丁寧に「その魚はそういうものです」と云い放ち、客前で水などを床にこぼそうとも一切慌てず、紙タオルを床に広げ、それを実に行儀良く足で踏み拭き、テーブルに違う客の請求書を自信満々で置いた。

横綱顔負けの彼女の振る舞いに数週間カルチャーショックで絶句状態だった私を、ある朝彼女は呼び出し、自分ごと女子トイレに閉じ込めた。予期せぬ出来事に何故か閉所に息が詰まり、コリアンという英語で判断しただけで、実は”北“の人間なのかも…という不安が沸き立ち、大きい麻袋か何かに収められた状態で船に揺られている自分の姿を一瞬にして想像出来た私は、必死に「ここは相撲を取るには狭過ぎます」と云おうとしたが声が出ず、万が一のことを考え、何故かズボンのチャックに手をやった。すると実に淋しそうな表情で彼女は「I'm Sorry」といきなり言ってきた。同情の意味も含むその謝罪は”国家命令に従う前の良心の呵責である“と簡単に想起させ、後ろにした彼女の手が妙に気になり、跪き自分の知るありったけの韓国語で何とか許して貰おうと思うも、頭中に浮かぶは「カムサハムニダ」、有難うという言葉のみ。焦る私に気遣う様子も無い彼女は「私が何か悪いことをしたのなら、ごめんなさい」と付け加え、後ろにやっていた手を前に出し、私の手首を容赦なく掴んだ。彼女の手には何もなかったが、彼女が掴む私の手首に妙な力強さを感じた為、本当は「私がこれから何か悪いことをするけど、ごめんなさい」と云いたかったのだと判断し、「このまま便所に流される」と、ドラえもんの4次元ポケット並の恐怖感が全身を包み込んだ。のび太のように泣いて足にすがれば、見逃して貰えるかも知れないと、辺りを見渡すも便器と洗面台だけで眼鏡は無い。北緯38度線を背中に感じ、細かく震え始めた私に彼女は今にも泣きそうな声で言った
「お願い私に冷たくしないで!」
― 言うてる意味が分かりません ―

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最終更新日 : [07/08]
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