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コラムバックナンバー 2003年特集記事

026「駄目だコリァン!と云っチャイナ」

photo日本での韓流ブームが北米の寿司屋にまで及んできたと思える程の、恐らく日本人以外の給仕担当としてはこの店始まって以来の長期採用を受けたと思われる彼女への店主の対応は、普通以下であった。しかし、私にとって彼女は、初めての純粋な韓国人であった以上に、顔面がモンゴル人横綱”朝青龍“という特別な存在であった。

顔だけでなく、仕事に対する熱意も横綱級な彼女は、自分のミスを先輩ウェイトレスに指摘されると、実に素直に「貴方にそんなことを言う権限など無くってよ!」と、エースを狙うかのように"お蝶夫人"並に返したり、美人社員を自分の個室に呼ぶ重役のように、女子便所に連れ込んだりした。まるで、自分の事務所のように女子便所を活用する不可解な行動や言動で周囲に深い不快感を与え続ける彼女だったが、私に対しては実に従順で、私がテーブルを片付け食器等を厨房の洗い場に持って行こうとすると、厨房の入口に仁王立ち完全に行く手を阻み、自分が持って行くと云い出したりした。然し、彼女の助けを一切必要としない私が、いち早く接客に戻るよう指示すると、彼女は鬼気迫る表情で私が持つ食器類を力ずくで無理矢理奪い、厨房へと姿を消した。

彼女の行動は"朝青龍"の本名「ドルゴルスレン・ダグワドルジ」並みに不可解だったが、私は接客に戻り、注文を受けた品を厨房に取りに行った。その時…悪夢のような光景が目を突き刺した。

彼女が何かに取り憑かれたかのように目の色を変え、汚れた皿から客の残り物を一つ残らず器に集め、それを厨房内の見えない場所に隠していたのだ。しかも、その器の盛り付けは、数週間前から急に肉類を口に出来なくなったと云い、賄いの時間になると急に店内から姿を消し、厨房で一人寡黙に無断で天ぷらを自分の為に揚げたりしていた程の歴浅ベジタリアンにも関わらず、物の見事に肉食類向けだったのだ。

私は、彼女が財政難からか給料を前借りしていたことを知っていただけに、ラップに包み家に持ち帰った残飯を晩飯として、菜食主義など構わず貪り食っている彼女の姿を、容易に想像出来、同情心を抱きそうになった。然し、夕方の勤務を拒否したにも関らず、夕刻過ぎまで店に居続けるという訳の分からぬ行動があっただけに、私の中では韓流ブームが完全に逆流し、唯の寒流となっていた。

そして、彼女が着けるエプロンが化粧回しに見え出したある日、私が自分で注文を取った客に注文通りの品を提供しようとテーブルに置こうとした際、彼女はテーブルの反対側に得意のスタイルで仁王立ち、客を挟んだ状態で「違う!違う!違う!」と幾度にも渡って大声で、客の食べ物に唾が掛かろうがお構いなく意味不明に叫んだ。これには流石に耐えかね厳しく注意する私に、彼女は哀しみに満ちた表情で「貴方には本当に失望したわ!」と冬のソナタの原題”キョウルヨンガ“並に理解不能な言葉を言い残し、店を出て行った。そして翌週…勤務表から彼女の名前が突然消えた。

数日後、他の従業員から、彼女はあの残飯を街のホームレスに分け与えていたのだと知らされた…。
――後味悪っ!――

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最終更新日 : [07/20]
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