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033「中華人皆屁ぇを国 【最終巻】〜僕の居場所は僕の居ない場所?の巻〜」

photo日本で、自分の将来を懸けて挑んだものを破門のような形で追放され、その後再起を計り挑んだものを懲戒処分に近い形で出入り禁止となり、そして生活を懸けて挑んだものを解雇という形で放り出され、夢を懸けて挑み続けていたものを解散という形で喪失し、国外に放逐された気分で来加した私は、日本に対し憎悪すら抱きながら必死に居場所を探していた。

そんな私にとって不満は多々あれど長期間の労働により信頼を得、自分なりの居場所を確保出来たと思える場所であった贋寿司屋から“飼い犬に噛まれた”感を含めた、背信に似た形で出入り禁止になった時、日本では特定外来種に指定される程、希少価値の高い動物として珍重され飼われていたが、突然外来種被害防止法に反すると捨てられた“アライグマ”のような心境に陥った。やり場の無い怒りを抱え、可能ならば、周辺住民からの苦情が殺到する程、野性化して巣食い、繁殖していくことで自分を正当化したかったが、今度は退去命令を受け、強制送還という形でカナダという国自体から出入り禁止になるのが関の山であった上、繁殖するにも相手が居なかった為、已む無く先を見据え、取り敢えず途方に暮れていた。

そんな折、初見で『ヨンゲ』と読んでしまった世界最長の道と、『デ』か『ダ』か明確化しないマカ○ミアナッツのように、『イ』か『エ』か不明瞭な○グリントンという道との交差点を西に行くとひっそり在る“さゝや”という店に食べに行くことになった。其処へ向かう道すがらは、地図があっても不安しか抱かない程殺風景で、日本人経営としてはトロントで最古と云われる日本料理屋がありそうな気配が一切しない。
然し、店内に入ると初めてなのに「お帰りなさい」と迎えられたような気にさせ、他店では避けたくなるカウンター席に自然と座りたくなってしまう。格別座り心地が良い訳でもない唯の椅子だが、長い異国での生活で存在自体を忘却していた『おしぼり』が全ての疲労を解放し、裸になって全身を拭きたくなる程の開放感を与え、誰かに優しく懐抱されているような気分にさせる。そして、メニューに目を通す私に「おまかせにしなさい」と言う大将。明らかに命令形であったその言葉は、母親に「早く寝なさい」と叱られ「やかましわクソババぁ!」と反抗期丸出しの態度を取っていた昔の自分を懐かしむ程、実に優しく響き、確かに居場所のあった実家を思い起こさせた。

日常「お前に任せる」など、余程信頼関係が成り立っていないと言えたものではない。ましてや初対面の人間にその日一日の締め括り(夕食)の全てを任せるなど出来よう筈がない。然し、そんな不安感を物の見事に排除する安心感と説得力が大将には妙にあった。そして間も無く、小さい手巻き寿司がサラダのようになった前菜が出された。醤油をベースに作られた少し酸味のあるお手製ソースのサッパリ感が口いっぱいに広がると、体中に清涼感が行き渡り、大将の命令に背かなくて良かったという安堵感が全身を包み込んだ。その後出された料理全てが、おっさんが作っているのに少々塩辛いお袋の味に変わる程、一心不乱に食べながら、私は確かに泣いていた。


nob morley
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最終更新日 : [11/08]
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