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63「本人を知らない目的地」

photoもんじゃ焼き屋の次男として生まれ、両親の離婚により母親に引き取られるも高校を中退してブラジルに渡り、当時日本人では珍しいプロ選手となり、その後帰国してJリーグ発足の立役者となり、数々の伝説を残している男。そんな彼を人は『キング・カズ』と呼ぶ。今や日本の現役最年長選手となった彼だが、ここ10年間かなりの苦渋を味わった。日本最強にまでしたヴェルディーをリストラされ、移籍先の京都が2部降格、そして「彼を2部チームに在籍させるのは失礼だ」という京都の判断で、神戸に移籍するも完全に戦力外として扱われ、遂に『キング』の称号が霞んで見える程。出場機会を求めて横浜FC(2部)に移籍した彼を、人は『キング』ではなく、単に未練がましい男と見るようになった。然しそんな彼が「還暦まで現役」という精神で、昨年横浜FCをJ2優勝へと導き、J1昇格を果たした。まさに『キング』復活である。
初めて来た国の初日の深夜に、宿泊場所を予約していなかったことに気付き、顔面蒼白になり「この際横になれれば何処でも良い」と、周囲を見回しても何も無く、在るものと云えば、格段に手っ取り早く一番安価な場所に寝ている人の姿ぐらいのものであった。確かに万が一の為にと寝袋を持って来てはいても「路上生活者になる為にこの国に来たんじゃない!」と、強い信念を揺るぎなく持ち、今にも道に横たわりそうになる程眠気まみれな身体を引き摺るように、取り敢えず誰かに訊こう! と奮起しても都会の真ん中っぽいのに交番も無い上、時間的に人も居ない。こうなればコンビニでも見付けて自力で! と、歩き出した途端、空港で釣銭欲しさに購入したガイドブックのことを思い出した。鞄に大事にしまった英語だらけのガイドブックを取り出すと、自分で買ったのに天からの授かり物のように見えてくる。漁るように宿泊施設が掲載されたページを広げ、現在地から最も近いホテルを探そうとするが住所だけでは分からない。ガイドブック内に大きく掲載された詳細地図と照らし合わせて場所を明確にしたいところだが、銭をケチったばっかりに唯一の地図が北米に於いてのトロントの位置を示しただけの、何の役にも立たない大雑把な愚地図。全身の毛穴から『恵まれて無さ』が滲み出てきそうなぐらいこの国で一番最初に買ったものは戦力外の本だった。
気持ち新たにコンビニを目指しKINGからDUNDASまで来た道をさらに北へ歩いて行くと、宝石のような光を煌々と店内から放つ大きな本屋を発見。其処は広さから言えばちょっと大きめの紀伊國屋書店ぐらいなのに、World's Biggest Bookstoreなどと実に大胆なネーミングがなされていた。然し、その時の私にはそんな冷静な比較など出来よう筈がない。実際の大きさなんかより幾倍も大きく見え、其処はまさに世界一の大きさを誇ってるように感じ取れ、有り難さから云えば我が生涯最大の本屋である。大きな旅行鞄を持って店内に入り、店員の冷たい視線を浴びながらもガイドブックを漁り、一番近そうなユースホステルを見付けた。住所は76 Church Street (North of King Street) ん? KING?
戻らなアカンやん! て、わしゃカズかっ!


nob morley
吉本新喜劇で活躍中のお笑い芸人。最近自分の文章力やトーク力のレベルが格段に低いと思う瞬間が実に多くなってきた。本を読まないとな〜。

最終更新日 : [02/22]
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