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67「ユースレスホステル」

photo1969年7月、アポロ11号に乗り、人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロングは、素晴らしい名言と共に自らが成し得た事の偉大さを人々の心に刻み込んだ。「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」
寝床としては余りにも落ち着き難い2段ベッドの上で荷物を枕に横になり、明日からの予定を考える。然し、ユースホステルまで辿り着くのに全ての体力を使い果たした私の脳には殆ど栄養分が残ってなかったようで、幾ら考えても何の得策も思い付かず、明日から希望に満ちた毎日が待っていることを願いながら眠った。
朝目覚め、自分の置かれた状況に先ず希望がないことを、見知らぬ男の「グッド・モーニング」の声で思い知る。普通のホテルの一人部屋とかであれば、するのは金の心配ぐらいのもので、特別何かに不満を抱くことも無いのだろうが、自分の部屋に、宿泊という次元を完全に超え、住んでいると云うより寧ろ、棲みついていると云った方が適切な長老的存在の人が四六時中居て、夜は暗がりで分からなかったが、ヒーターの上や窓枠のちょっとした、何か物を置けそうなスペースの至る所にこれ見よがしに私物を並べ、挙句、何処の土産物なのか定かでない奇妙な人形がいたりして、彼にとっては物凄く聖地的な雰囲気すら漂う部屋にコーディネイトされ尽されているという現状に気付かされると同時に、彼の”Are you Japanese?“
という問に”Yes!“と答えた瞬間、彼がニヤッと不敵な笑みを浮かべたことで、不満以前に不快な気分が満開になった。
また、銭湯等の公衆浴場を一切の気兼ね無く利用出来るのに、この時ばかりはいつもとは違い、何故か妙に同じ部屋のむさい男達が使うシャワーの使用を憚ってしまう私に、誰かが使い終わる度に長老が「シャワー使えるよ!」と優しく声を掛けてくれるのが単なる彼の親切心とは受け取れず、何らかの策略なのでわ?と訝しく感じさせ、その一抹の疑いが、私がシャワーを使っている間に他の男達と共謀し、私の荷物の一切合切を掻っ攫い居なくなる魂胆なのでわ? というネガティヴ思想を巡りに巡らせ、膝の震えを生み、気が付けば、少々肌寒い中無理に泳がされてプールサイドで唇を紫色にさせながらタオルに包まっていた夏休み明けの小学校のプール教室を鮮明に思い出すぐらい、歯で細かくガチガチと音を出しながらの全身の震えが止まらなくなっていた。
今日一日の予定を色々考えてみても、我が部屋が何一つとして安心出来る場所でなく、怯えが先行するからか、何処に行こうとも、部屋に帰って来た途端、男達が一斉に私に襲い掛かり、身包み剥がして私の肉体と魂が分離するぐらいの暴行を加え、夜には自分がこの世に居ない…という結末になってしまう。たった一夜でユースホステルでの生活に嫌気がさした私は、5人の男たちが蠢く部屋に足を踏み入れたことを「人類にとっては単なる一日だが、私にとっては絶望的な窮厄だ」と自分の心に刻み込むように呟き、我が荷物全てをバスルームに持ち込んで、取り敢えず震えの原因を寒さだと信じ、熱いシャワーを浴び、身体を温めた。

nob morley
吉本新喜劇で活躍中のお笑い芸人。体調を崩し、流行のインフルエンザかと、病院で検査。結果は陰性。病気も仕事も流行りに乗り切らんようで…(悩)。

最終更新日 : [04/08]
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