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73「奇蹟に向かう軌跡」

photo世界中に約65億の人間が居り、200近い国がある中、過去日本で出会った人間との海外での偶然の再会が一体どれ程の確率で起こり得るのか、知り合いの数学博士に訊いてみた。この計算にほぼ丸一日を要した博士の話では、細かい計算をすれば単位表記不能な天文学的な数字になるが、ざっと粗く計算した感じでは約544兆分の1という確率が算出されるらしい。そして、この確率を割り出し、彼はこう付け加えた。「この確率で再び出会うということは、完全に奇跡である」
街でバッタリ再会した訳ではないが、昔、日本で出会った何処の国出身かも分からぬ外国人が、自分が気ままに来た国に住んでいたことだけでも十分な偶然であり、その彼がミシサガという、車で簡単に行ける隣の市に居るとなれば、こんな偶然あって良いのか? と自分の身の上に起こっている事実に寒気すら感じた。
実際待ち合わせ場所に現れた1年半振りに見る友人の姿は、以前の育ちの良さが身体にまで繁栄しきったふっくらというか単にデブった体型とは大きく違い、ともすれば「誰?」と不躾に訊いてしまいかねないぐらい変わり果て、アルカイダのメンバーみたいに悪い感じで痩せており、偶然の積み重ねに驚いたときよりも本人の変貌振りを目の当たりにしたときの方が、全身を駆け巡る寒気の温度は低かった。
その寒気が、対カナダ恐怖感や嫌悪感、その他ネガティブな感情が綯い交ぜになって湧き出た新たな寒気と混ざり合い、身体の表面に膜を張っているような状態だった。然し、久々に会って直接聞く彼の声に暖かさを感じ、寒気の膜がその温もりで実に素直に溶かされていき、気付けば鼻をすすりながら涙声で会話をしていた自分が、陽気な顔して彼の車の助手席に座っていた。
彼はトロントの日本人に関連するあらゆる場所に連れて行ってくれ、想像していた以上に日本の人や文化がこの街に溶け込んでいることを知り、カナダに来て2日目でホームシックを通り越しカントリーシックになり掛けていた私だったが「先ず1年、ここで生活してみよう!」と前向きな気分になれた。その背景には当然、彼の存在が見事に大きな心の拠り所となっていた。
そして、夕暮れ時になり、彼が晩の用事にそろそろ行かなくてはならない空気になり、急に淋しさの風が心を通り抜け始めると、そんな私を気遣ってか、「用事と言っても単に男友達と2人で食事をするだけだから、もし良かったらお前も一緒に来るか?」と誘ってくれた。断る理由など万に一つとしてなく、目的地であるパテオの有るレストランに軽い気分でついて行くと彼の友人は既に席に着いており、何か申し訳無さが込み上げたが、私の姿を見るなり笑顔で立ち上がり、自ら自己紹介をしてくれ、私の心の壁をいとも容易く取り除いてくれた。そして、私がお手洗いに行こうと席を立った時、テーブルに置いていたフォークに右手が頼りなく当たり、下に落ちた。それを普通に拾おうとテーブルの下に頭を入れると、彼の右手とその友人の左手が重なり合い、深くもつれているのが目に入った。
『再会した友人がゲイだと知らされる確率って何%やねん! これこそ正に奇跡やろ!』

nob morley
吉本新喜劇で活躍中のお笑い芸人。最近全く舞台出番が無く、コラムのことばかり考えて過ごしてる割に締切を過ぎてしまいそうになる…

最終更新日 : [08/08]
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