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76「事実真実現実恐怖」

photo『彼女が浮気をしているのでは…?』という疑惑の念が日に日に増していくのを止められない彼女の帰りが遅い日の続く月末を経て、”シロでありますように…“と、月が変わり月末の忙しさから解放されたであろう彼女が毎日早く帰って来るようになりさえすれば良いと、合わせた両手が小刻みに震える程に願いを込め、ヒーローの登場を心待ちにする子供のように彼女の帰りを待ってみた。然し、私の純粋な願い虚しく、幾ら待てども彼女の部屋には私一人のままで何ら変わらず、時計が日付の変わりを知らせても先月と同じく彼女は帰って来なかった。
抱きたくなかった疑念がしたくない確信に変わり始め一週間が経過したぐらいのとき、私は限界を感じ、現実を知る怖さに負けない強い心を持ったと自分に言い聞かせ、彼女が帰って来るまで起きて待つことにした。それでも恐怖感を完全に払拭出来ない私は、自分が少しでも脅かす立場になれば多少恐怖感を拭えるかも知れぬと、万が一寝てしまうようなことがあった場合に電気を点けたままで寝ているというのは居候の身である以上、分が悪過ぎるということも含め、完全に部屋を消灯し、家の近くまで帰って来た時に外から部屋の窓を見れば彼女にとっては「彼氏は先に寝てくれてる」と思い込めるような状態にしてみた。
そして、起きている間の単なる暇潰しで点けていたテレビの画面に”ガスの元栓に注意!“という静止画が出、本日分の放送の終了を告げ、何処かのビルの屋上に設置されたカメラからの深夜の高速道路を主体とした風景映像が流れ出した時、玄関の扉に鍵が刺さる音が静寂な部屋に響き、重く扉の開く音と共に寝ているであろう私を起こさぬよう気遣う彼女の姿がそろりと玄関に…。私はなるべく音を立てないように気を配り静かに扉を閉めようとしている彼女の背中に刺し込むように「こんな時間まで何しとったんや?」と、まるで非行に走り掛けた子供を叱る親のように訊いた。彼女の反応は分かり易く、誰にでも分かる『驚』という感情を見事に表現し、完全に私が寝ているものと思い込んでいたようで、肩を一瞬ビクッと震わしたかと思えば、見てはいけない霊でも見るかのようにゆっくりと振り返り、青冷めた表情で私を見つめた。その表情が私にとっては『彼女はやっぱりクロだった』と言い切るに易く、これから数分で今まで彼女と9年もの間で積み重ねてきた信頼やその他全てが音を立てて崩壊していくのだと実感出来た。
初め彼女は私の「何をしていたんだ?」という問いに黙秘を続け一切何も答えなかった。然し、私の執拗な質問に耐えかねたのか彼女の重く閉ざされた口が開いた。「カラオケとか…漫画喫茶とか…」大人の遊びとは思えない高校生級の夜遊び場の名前が出て来たとき、単に仕事仲間と毎日ワイワイやっていただけなのかも知れないと、都合の良い解釈をしそうになったが、漫画喫茶に引っ掛かり、ここまできたら訊かざるを得ない。「誰とや?」この問いに彼女は困惑した。答えあぐねている彼女に助け舟を出すかのように「男とか?」と訊くと申し訳無さそうにゆっくり首を縦に振った。(つづく)

最終更新日 : [08/31]
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