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91「一人で暮らすということ〜episode 4〜」

photo一時は死を覚悟するぐらいに尋常で無い程に怯えていたものの正体が隣の子供の足音だったと知った時、自分なりに絶妙のタイミングで突っ込みを入れたのだが、隣の家族の生活音はこっちに丸聞こえでも、こちらの声は一切向こうに届かないのか、何の反応も無く、幾許かの静けさがどんよりした空気と一緒に私の周囲に横たわり、それが灰色掛かった感じに見え出すと、『淋』と『寂』という文字が幾つも浮かんで見えてきて、それが人型に変形したような気がすると、突如私の足首から爪先にかけて優しく指を立て撫で回し、彼女に甘える男の如く膝枕をせがんでいるように感じられ、その瞬間、背筋に冷たいものが閃光のように走り抜け、足元から絡み付く様に近寄って来る得体の知れないものを追い払おうと足をバタバタしてみると、妙な間(ま)を外した感じで子供の笑い声が隣から聞こえて来た。
その笑い声が単に家族の仲睦まじい団欒を表す平穏で無垢なものであっても、私には完全に自分達の隣に越して来た住人が孤独に耐え切れず足掻き苦しんでいることを蔑んだ嘲笑にしか聞こえず、薄い壁を隔てた向こうとの温度差をこれでもかという程思い知ると無性に悔しくなり、今の今まで嫌悪感以外抱けなかった人型と化した灰色空気しか自分側には居ないのだと思うと、逆に「俺にはコイツが居るやないか!」と思えて来て、そうなると愛着を抱くのに時間は掛からず、其処に何の感触も無いのに、恰も自分の太腿に頭を乗せ誰かが寝そべっているかのように振る舞い、敢えて隣に聞こえるように、「いつも思てたんやけど、これは『膝枕』やなく『腿枕』やなぁ。『膝枕』なんかホンマにしたら痛いだけやと思うねんけど…お前もそう思うやろ?」と灰色空気君と会話をしてみた。すると、やっと私の声が向こうに届いたのか、一人暮らしと思っていた所から話し声が聞こえてきたことに意表を突かれたのか隣が妙に静かになったから(今となれば単に就寝時間になっただけだと思うが、その時は…)驚きを隠せずひそひそと「一人暮らしやないみたいやで」と家族で会話をしている姿を想像し、妙に勝ち誇った。
普段独り言を言う人間を気持ち悪がって避けていたにも関わらず、空気に話し掛けることが、己の精神を穏やかなものにしていき、自然に落ち着かせていくと同時に、”淋しい“という感覚を徐々に消していくのが分かると、私は空想上の友達を作り一人で遊んだりする子供のように、灰色空気君をルームメイトにし、自分が何か身動きを取る度に彼に話し掛けるようになった。
不思議なもので、植物に話し掛けながら水をやると活き活きと成長していくのと同様に、一人暮らしを始めて数時間の部屋の中で見付けた友達は、話し掛ける度にみるみる内に人間らしく表情を持つまでに成長し、気付けば彼の案内で改めて部屋の間取りを確認しており、全く気付いていなかった問題を発見した。1階にトイレと3畳程のダイニングキッチン、車庫としても使える倉庫、そして2階に8畳と6畳の2部屋にベランダがあり、お風呂は6畳の部屋から一旦ベランダに出ないと入れない…え? これって裸で一瞬でも外に出なアカンやん!

nob morley
吉本新喜劇の芸人。昔は落語家。遂に大阪で2度目の一人暮らしを開始。やっぱり、一人はどう足掻いても淋しいですなぁ〜。誰か私の心を温めて!

最終更新日 : [04/9]
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