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92「一人で暮らすということ『秘宝ジャギストーン』〜episode 5〜」

photo不動産屋に紹介して貰い物件を見に行ったときは、まだ其処には人が住んでおり、部屋の雰囲気を軽く見るぐらいしか出来ず、間取り図を見た段階では異変に気付く事無く契約を交わし、家主に敷金を支払い、引越しを終え、いざ生活してみると、お風呂が部屋の外にありベランダからしか入れず、プラスで考えれば”いつも気分は露天風呂“なのだが、そんなポジティブな考えは何の役にも立たず、実際に風呂に入ろうとしてみると、脱衣場がある訳でも無いので、単純にすっぽんぽんで一旦ベランダに出なければならない。一糸纏わぬ産まれたままの人間にとって最も無防備な姿で、ほんの一瞬でも外気を味わうと、そういうつもりは一切無いのに、積極的に野外露出をしているようにしか感じず、頭の中に『公然わいせつ罪』という文字が電光掲示板のように表示され、それが警告音と共に点滅し出すと、単なる日常の当たり前の行為である入浴が物凄く罪深い事に思えてきた。
小学生のとき、学校の近くにある正規の通学路から完全に外れた大通りに抜ける百メートルぐらいの真っ直ぐなひと気の無い細長い路地を、学校帰りにわざわざ通り、その直線の道を誰にも目撃されることなく、どれだけ長く下半身を剥き出しにしながら全力疾走出来るかという、ジェームス・ディーンの映画”理由なき反抗“であった『チキンレース』に似た遊びが私の周りで流行っていた。その裏道が表通りと交わるギリギリの所にお地蔵さんがあり、その地点が一応ゴールであったが、子供ながらにいけないことをしているという感覚があるのか、この根性試しに挑む者の全てが、走るのに伴い徐々に近付いてくる通行者の多い大通りの重圧に耐え切れず、いつもその手前数メートルの地点で心折れ、そそくさと露にした下半身を隠し、悔しい表情を浮かべた。毎日その重圧との戦いに挑み、
”地蔵越え“を目指していたが、小学校6年間でお地蔵さんに自分の下半身を見せることが出来た者は一人として居なかった。そして、我々はこの遊びを、考案者の鈴木君がズボンとパンツを同時に下ろし走り出す時に不意に叫んだ言葉から『ジャギストーン』と呼んでいた。
全く意味の無い『ジャギストーン』という言葉は、その後、妙な意味を持つようになり、我々の辞書に「ジャギストーン=人に陰部を見せ付けること。カードゲームの『UNO』で、残り一枚になった時、必ず『UNO』と云わなければならないように、人前に自分の下半身を晒す時は必ずこれを叫ばなくてはならず、これを叫びさえすれば、どれ程人に不快感を与えようが、その罪は全く問われない」と記されているのだと信じるまでに至り、水泳の授業前には、殆どの男子がこの言葉を発して着替えていたし、休み時間などにノリで女子にモノを見せ付け悲鳴を上げられても、これさえ云っておけば男子の笑いは見事に得られたし、不思議なことに先生にチクる女子も居ず、怒られることは一切無かった。…あれからすっかり大人になり、あの頃無かった毛も生え揃い、入浴時に外に出る度『ジャギストーン』と云い、妙な罪悪感から逃れようとしている自分が奈良の夜空の下に居た。(つづく)

nob morley
吉本新喜劇の芸人。昔は落語家。5月11日『座長超え』というイベントをやります。日本の生の笑いに飢えた諸君、カナダからでも見においで!

最終更新日 : [04/23]
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