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95「一人で暮らすということ〜episode 8〜」

photo人生で初めての一人暮らしは思った以上に過酷で、実家暮らし特有の、妙な親のしがらみから逃れる為でもある、”ノブちゃんの夢の自立生活アパート住まいフリーダム・ワールド計画“は本来の希望的観測とは裏腹に、両足に重い足枷を掛けられたような状況に追い込まれていた。
片足の枷を、引越し初夜に私を恐怖に追い遣り、敬虔な新興宗教信者ぶりが実に迷惑な隣の家族とするならば、もう片方は、アパートの向かい側の家に一人で住んでいた痩せ細った老婆である。
この老婆の家は、おでこをバットにあて、それを軸に下を向いてクルクルと何回か回り、平衡感覚を完全に失った状態で見ても明らかに傾いていると分かる程の近年稀に見る物凄いボロ家で、一見人が住んでいるとは想像もつかない、と言うより、色んな意味で怖過ぎて人は住んでいて欲しくないぐらい、住居というジャンルを完全に越えていた。然し、傾いていたのは住居だけでなく、夜の内に私が所定場所に出したゴミを翌朝私の玄関先に置き、状況が読み取れず固まっている私に、「それ、貴方のやね。夜は猫が荒らすから次からは朝に出してくれるか!」とゴミ収集時刻がとっくに過ぎた状態で叱りつけて来たことがあったぐらい、その住人の人間性もかなりの傾斜を内面に抱えていた。
そしてある日、若者は確実に眠っているであろう午前6時頃に突如”ドンドン“と激しく、玄関のドアを壊すぐらいの勢いで叩き、甲高い声で「森田さぁ〜ん! 森田さぁ〜ん!」と何度も叫んで深い眠りに就いている私を起こし、眠さ満開の表情でドアを開けると、「大変! 車が倒れてるの!」と、今まで見たことも無い光景が眼前に立ちはだかったかのような形相で訴えるので、家の近くで自動車が横転していて、もしかしたらケガ人が居るかも知れないから若い力を貸してくれ的な人命救助にも繋がるようなことだと思い、これは一刻を争うと寝間着のまま急いで靴を履き表に出て、老婆に「何処ですか?」と訊くと、何かの拍子でバランスを崩したのかアパートの前に置いていた筈の私の原付が倒れていて、老婆はそれを指さし「車が倒れてるよ」…。
一瞬、頭の中が真っ白になった。然し、まさかそんなことはないと、ただ事故現場へ向かう途中で偶然、私の原付が倒れているのを発見しただけだと思い直し、取り敢えず急いで原付を立て直し、「で、何処ですか?」と訊こうとすると、さっきまで私の傍に居た老婆は、一時はどうなるかと思った的な安堵感に浸る表情を浮かべながら自分の家の前で敷地範囲を完全に越えた感じでやっている趣味のガーデニングに精を出していた。そのまさかであった。彼女にとっての車は、私の原動機付き自転車であった。
早朝に無理矢理起こされた原因が原付の横たわりとなれば、それが幾ら親切心から来るものだとしても嫌がらせとしか思えず、文句を言ってやろうと老婆に近付くと、彼女はピンセットを片手に持っており、何をしているのかとよく見ると、元気良く育った植物の葉にへばり付いたナメクジを職人のように一匹一匹丁寧に摘むように取り除いて、それを私のアパートの玄関に向けて投げ捨てていた。
『いや、何してんねん!』

nob morley
吉本新喜劇所属の芸人。5月11日『座長超え』というイベントは、皆様のご支援のお陰で大盛況に終わり、只今、次回のイベント日時を会議中です。

最終更新日 : [06/11]
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