bits lounge
bitsブログ、トロント在住ライターのコラム集、トロントリアルライフ、体験談etc

ホーム > ブログトップ > 99「二人で暮らすということ〜episode 2〜」
SHOP ショップ
コラムバックナンバー 2003年特集記事 お問い合わせ

当コンテンツに関するお問い合わせはこちら
■お気軽にお問い合わせください。
コラムに関するご意見・ご感想をお待ちしております。
■随時、ライター募集中!
当コンテンツでは、ライターを目指している方のコラムを積極的に採用していきますので、ご応募お待ちしております。
■PRの場をご提供
ビジネスプロモーションの一貫としてのスペースも提供しています。

これまでに執筆したライターのご紹介!
'05年バックナンバー
'04年ブログ集
'03年コラム・特集記事



99「二人で暮らすということ〜episode 2〜」

photo実家からの逃亡者としてカノジョの住む大阪へ移住することになった私は、生活の為のアルバイトの面接を受けるよりも、夢の為のオーディションの面接を受けることを選び、気分はすっかり銀幕スターで『○○映画オーディション会場』と書かれたプラカードを先頭に出来た百人程の人の列に並び、廊下から会場に案内されるのを緊張した面持ちで待っていると、案内係のオバサンに「これに書いてある台詞を覚えて下さい」と紙を渡された。台詞と云っても3、4行の簡単なものだが演技を人に見られるとなるとまた別の緊張が芽生え、淀み無く台詞を言えるように脳に覚えさせると云うよりも身体に染み込ませていくと云った感じでブツブツ念仏のように小さく何度も唱え毛穴に刷り込ませていると、オバサンに受付番号と名前を呼ばれ、会場に案内された。
会場は、本来そのビルで『会議室』という役割を担っているスペースなのだが、”一体どれだけの人数で会議をするんだ?“と思わずには居られなくなる程、『多目的ホール』に名前を変えるべき予想以上の広さで、入口から見て右側には”一体どれだけの人間が銀幕に夢を馳せるんだ?“と困惑しながら日本の未来に不安を抱えてしまい兼ねない程、廊下に並んでいた数倍の人間が、下は小学生ぐらいから上は六十を過ぎたであろう老人までが入り乱れ、並べられた数百脚の椅子に強張った表情で座っており、左側には大きな『コ』の字を作る形で配置された数十の机、その机一つに対し自信に満ち溢れた感じの審査員が一人ずつ座っていて、一応それぞれの審査員の肩書きを一通り紹介されるも、余りの人数に覚えられない中、唯一『コ』の字の真ん中に皆から守られるような形で座る厳しい顔の初老男性がこの映画の監督であることだけは瞬時に覚えた。オーディションは銀行窓口のように「次の方!」の声と共に手を挙げた審査員の前に行き、自分のプロフィール等を伝え、与えられた課題を披露するというルールで進行していた。同じ場所で一斉に数十人が各々のやり方で自分の特性を伝えようとしている様は見る人が見れば極まった宗教活動と思ってしまう程の実に異種異様な光景で、会場内には妙な熱気が換気されることなく充満していた。
そして遂に私の番が…「次の方!」と呼んで手を挙げた審査員を見ると、幸か不幸か名前は忘れても肩書きだけは唯一覚えた監督であった。この映画の最高責任者に見られるとなると半端無い緊張、然し、そこはきっちり腹を決め自分の名前と生年月日等のプロフィールを騒がしい会場が私の声で静まり返るぐらいの誰よりも大きな声で叫び、与えられた課題披露を始めた。
「何だこの音は? それにこの地響き…うわぁっ! 雪崩だ、雪崩だっ! 雪崩が来たぞ〜っ! みんな逃げろぉ〜っ!」と初夏を思わせる暑さ漂う季節には逆に打って付けの台詞を一文字も余すことなく正確に伝えた。…筈が監督に「”雪崩だ“が一回多かったね」と注意され、完全に失格だと悟った。すると監督は、私の履歴書に赤い
特 判子を押し「クランクインは3ヵ月後だから、それまでレッスンを受けて貰います」と、私の銀幕デビューを約束してくれた。

nob morley
吉本新喜劇所属の芸人。明らかに『女運』がなさすぎる彼。今週のエピソードは悲しすぎて書けませぬ。で、結局また彼女なしの生活に戻ったのよね?

最終更新日 : [08/07]
▲PAGE TOP