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104 「落語と暮らすということ」

photo昔は芸人になるには先ず誰かの弟子にならなくてはならなかった。それが今や、NSCをはじめ、数々の芸人養成所の存在により”芸人=誰でも気軽に出来る職業“になりつつある気がする。然しそんな中、未だ落語だけは、伝統芸能と言われるだけあってか、弟子入りをしなくては『芸人』という肩書きを背負いながらプロとしてそれで飯を食っていくことを許されていない。だからと云って、落語の世界に入るのが物凄く難しいことなのかと云うと別にそうでもない。上方と江戸、所謂、大阪と東京でどれ程の違いがあるのか知らないが、上方では先ず自分が弟子になりたいと思う師匠を決め、その師匠に弟子入りを志願し、師匠の許諾を得られさえすれば、”落語の世界にいらっしゃい!“となる、実に簡単な流れである。その後は、師匠宅に通い師匠の身の回りの世話などをし、師匠からネタの稽古を付けて貰い、名前を貰い、その名前で高座(=舞台)に上がり、落語を披露したりしながら、そういう生活を2・3年続けて『年季明け』を迎え、晴れて”ひとり立ち“し、1人の落語家として認めて貰うのである。
弟子入り前に私がそういう流れ全てを知っていた訳では無い。最近の落語家弟子入り傾向としては、殆どが大学の”落研(おちけん=落語研究会)“出身者で、それなりに落語に対して知識のある人間で、師匠に関しても弟子入りする前から色々調査済みであることが多い。然し、私は弟子入り志願する1週間前まで師匠の存在も知らなかったぐらいの落語の”ら“の字も知らない完全無知な人間であった。
それでも、何の芸も無いだけでなく、彼女から生活保護を受ける程の激貧で芸人養成所に入るお金も無かった私は、何とか芸を習得出来て”芸人として生きていく“方法は…と悩み考え、無料で芸人になる方法として『落語家』の道を見付け、生き急ぐかの如く、その日に寄席なるものを初めて見に行き、そこで一番面白いと思った或る師匠の出番を調べ、1週間後、師匠を楽屋口で出待ちし、まだ自分の師匠と決まった訳でも無いのに「師匠! 弟子にして下さい!」と頭を下げて頼み、ここでは何やからと後日家に来いと名刺を渡されるに至り、翌日名刺に書かれた住所を参考にコンビニの地図を立ち読みしながら家を調べ直接出向き、門前払いされるかも知れぬという不安を抱きながらインターホンを押すと奥さんが出て来てくれて師匠の居られる部屋へ通してくれ、師匠の顔を見るなり昨日と同じ「師匠! 弟子にして下さい!」という台詞を言うのと同時に深々と頭を下げて頼み込み、何とか師匠の許諾を貰おうと必死だった。
ところが、師匠から「何でワシやねん?」と訊き返された瞬間頭が真っ白になった。自分が落語を全く知らない事を露呈してしまったら絶対駄目な気がした為「この間、初めて見た寄席で師匠が一番面白かったから…」なんて言えよう筈がない。となると今度は自分が何故師匠を選んだのか理由が見当たらない。「何でこの人なんや?」と自分に何度も問い質すが、答えが全く出て来ない。これはマズイと何とか絞り出し師匠に返した私なりの最高の言葉が、「師匠の事が好きだからです」… I am not gay.

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。家にネット環境がない彼、今回は電気屋の展示品のパソコン体験コーナーから人目を盗んで送ってます。

最終更新日 : [10/23]
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