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108「私は不良ではありません。不純です。」

photo「俺からは何の連絡もせん。自分で事情を説明した上で、明日、親を連れて来い」
担任は、それだけは勘弁して下さいと縋る様に訴える私の姿を目の前にしても、情に流されること一切無く、渡り廊下に人気は全く無いとは云え、若干声を潜める感じで、それでいてはっきりとした口調で残酷な命令を下し、絶望感に苛まされ膝を地面に着きその場から身動きが取れなくなってしまった私を尻目にそそくさと職員室に戻って行った。私は担任の背中を呆然と眺めていたが、それが見えなくなる寸前、『冷酷』という文字がその背中にボワッと浮き出たような気がした。
未成年者である以上、子供の失態の責任は親が取るのが当然なのかも知れないが、万引きとかならまだしも、テスト中にカンニングした罪を、親が一体どう責任を取ればいいのだ。親の教育が間違っていたから私がカンニングしたのか? いや違う。単に私が勉強をしなかったからだ。そして、高校を卒業出来なくなって親に迷惑が掛かるようなことだけは何としてでも避けたかったからだ。然し、その為のカンニングが見付かり『親を呼び出し』となってしまい、逆に多大なる迷惑を掛けるという最悪な結果となったのだが、そんなことよりも、担任は親を呼び出してどうしようというのだと考えを巡らせた途端に当然の答えに行き着き愕然とした。
それは、診察後の患者に対し医者が訊く「今日は御親族の方は来られてますか?」という質問から習えば簡単なことで、これを訊かれた瞬間、大抵の患者は自分の身に残念な何かが降り掛かっていると予測するであろう。―と云うことは、今の自分にとって最も残念なことが我が身に… それは『留年』しかなかった。卒業が出来ないということを親に知らそうと担任はしているのだと気付いた瞬間、クラスメイトの顔が次々と記憶から遠ざかっていく様な気分に陥り、頭の中に描く卒業アルバムの集合写真から自分の姿だけが消えてしまった。私にとって明らかに地獄への扉が開かれた瞬間であった。
取り敢えず、家に帰って親に「先生が明日来てくれって」と言うしかないが、この先生が”医者“の意味であって欲しいとどれ程願ったことか、この時ばかりは不謹慎ながらも自分が大病を患っている方がずっとマシだと思えた。それにしても、此の事を帰宅して直ぐに話す取っ掛かりが何一つとしてない。そこで、不良ではない私は、普段よりかなり遅い時刻に帰宅をすれば、当然の如く親は心配し何かあったのかと訊いてくるであろうから、その時に事情を説明するのが一番好いと考えた。だが、試験期間は午前中で終わる為、色々あったとは云え時刻はまだ昼過ぎで、そこから親が遅いと感じる時間まで約5時間、一人でどう時間を潰して良いのか分からない。それ以上に、精神状態からしてそれだけの時間を一人で居ると自分が何を為出かすか自分でも分からなく不安で仕方なかった。そんな心許なさ故、偶然教室に残っていた友人に声を掛け、事情をそれとなく話し一緒に居てくれと頼み、こういう時の時間潰しはこれしかないと、不良ではない我々は学校近くの寂れたストリップ劇場に向かった。

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。今回の彼のイラスト、どこか懐かしくない? 懐かしいね、って返事をしたあなたは30代ですね。by 編集部

最終更新日 : [12/23]
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