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110「私は不良ではありません。不遇です。」

photo不審感を全く含まず、実に軽快なトーンでの「2人で3千円ね」と云うその声は、明らかに中年男性のダミ声であったが、その時の私には天使の清らかな囁きにさえ聞こえた。窓口のオジサン天使に一人1500円ずつを渡してチケットを受け取ると、天使は「”人生勉強“しといで!」と華々しく見送りの声を掛けてくれた。
私個人の状況としては全く持って人生勉強などしている場合でなく、単純に試験勉強をきちんとしなかった自分を悔やむべきなのだが、入り口に立つ係りの人からも、チケットの半券を切り取る際に、馴れ馴れしくも歓迎の気持ちを込めて「楽しんでおいで!」と一声掛けられると、この後家に帰ると自分を待ち受けているだろう地獄のような現実なんてどうでも良くなり、すぐ其処に在る未知の世界に自然と胸が高鳴った。
入り口を抜けると凄く薄暗く、一応劇場ロビーなんだろうなぐらいの、薄汚れたソファーと灰皿がせせこましく置かれたスペースがあり、清掃が全く行き届いていないのが暗がりでも一目で分かる程、床は汚れているなんていう次元を完全に越えていた。所々に空いた穴から中のクッションの綿が溢れ出しているソファーの横に、劇場特有の分厚く大きな両開きの扉が一つだけあった。古び過ぎて触る気も起こらないような汚い扉だったが、隙間からチラチラと漏れる七色の光と完全に遮り切れておらず薄っすら聞こえる場内の音が、この向こう側に現実から完全に離脱した夢のような世界が待っているのだと感じさせ、有無を言わさず私の心拍数を身体が潰れるのではないかと思う程高まらせ、汚い扉を神々しく光る天国への扉と思わせた。
汗ばむ手で重い扉を開けると、妙に湿っぽい空気が漂う中、我が目に飛び込んで来たのは、光り輝く裸婦の姿。眩いばかりのスポットライトを浴びて、自信に満ち溢れた表情で1人の女性がステージ上で悠然と、見事に一糸纏わぬ姿でダンスを披露していた。その余りに浮世から逸脱した情景は、同じ地球上での出来事とは思えず、自分の身体が一瞬少しだけ宙に浮いたような感じがした。フワフワっとした感覚のままではあったが、徐々にスポットライトの光に目が慣れていくにつれ現実を受け入れ始め、冷静に周囲を見れるようになり会場全体を見回すと、客席には草臥れた社会的に完全に行き場を失くしたオッサンと呼ぶに相応しい初老の男性が4〜5人、チラホラ頭を垂れるように腰を下ろしてボーっと踊り子を眺めているだけで、一切の活気が無かった。
私自身、不良ではなかったが、その時がストリップ初体験の友人に対して、私は其処のストリップ劇場が初めてなだけで、中学の時に別の劇場に何度か行ったことがあった。然し、人数の少なさを加味しても、これ程までに客の反応が乏しかったことは未だかつてなく、同じ男として、逆に仕事とは謂え全裸で男性を誘惑するように一生懸命踊るストリップ嬢に失礼だと憤りを感じ、『俺はそんな踊り子に対して失礼なことはしない!』と、友人と勇んで最前列の席に腰を下ろそうとして、改めて踊り子さんを見ると、遠目からは判らなかったが、母親以上の年齢の厚化粧のオバサンだった。

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。今年は正月から39度の高熱にうなされるは、下痢でフラフラなるは、締め切り間違うわでてんやわんや!

最終更新日 : [01/21]
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