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113「私は不良ではありません。不憫です。」

photo 父親だけの予定が、”子どもが悪さして親が謝りに行く“権利を放棄した筈の母親までもが何故か学校に来た。眼前に2脚しかないパイプ椅子を呆然と眺め、自分がこれから過ごすことになる終了時刻の決まっていない魔のひと時を、終始立った状態で送ることになるのだと我が太腿と脹脛に気合いを入れ、これこそが罪に対する罰なのだと己に言い聞かせ、狼狽し切った自分の心をどうにか正常な状態に戻そうとした。程なくして職員室の扉がノックされ、担任が応対し、扉を開け見慣れた顔の男性が部屋に入って来た時、それが魔の時間の始まりだと悟った。産まれてからほぼ毎日見て来たその見慣れた顔の持ち主は見た事も無い複雑な表情を浮かべており、自らの手で扉を丁寧に閉めるなり、深く深く担任に向かって頭を下げ「此の度は息子が馬鹿な事をしまして、本当に申し訳ありませんでした」といきなり愚息の為の謝罪を始めた。
私は唐突な父親の深い謝罪にかなりの意標を衝かれ、どうして良いのか分からなくなったが、それ以上にもぅ一つの見慣れた顔の女性が入室して来ないことの方が気になり、全く持って無策の状態に陥っていた。然し、担任は定年を数年後に控えたベテラン教師なだけあり、幾多もこういう状況をこなしてきたようで、瞬時に全ての状況を察知したのか優しさに満ちた表情で「まぁまぁ」と父親を宥めながら椅子を勧め、私に「お前も座れ!」と親子2人を眼前に座るように促した。父親の行動から母親は車中で事の行く末を案じながら待っているのだと読み取り、若干気持ちが空回りしてるようにも取れる父親の気持ちを静めながら着席を促した担任には、店内で注文する客の応対もしながら耳に付けたイヤホンマイクでドライブスルーの客の応対も同時にこなし、それでいて「ご一緒にポテトは如何ですか?」の営業文句を忘れないマクドナルドの店員並みの、凄味に満ちた卓越した業(わざ)があった。
その担任に対して父は殆ど話も聞かず、我が事のように「すみませんでした」とただただ頭を下げるだけで、私は初めて見る父のそんな姿を『警察に捕まった訳でもなく、ただ息子がカンニングしただけで何でそないに頭下げるんや!? 昨日、”カンニングなんかしてもええけど、見つかんなっ!“って怒ってたやん!』と冷ややかに見ていた。然し其処には少しの歪みも無く、純粋に子どもへの教育を間違っていたと反省する一人の親として、何とか息子に高校だけは卒業させてやりたいと願う気持ちが込められていた。それに気付いた私は、我が罪の重さと親が子を思う気持ちの重さを痛感し、父に習うようにただただ頭を下げていた。2人の謝罪が心を動かしたのか、担任は「今回の事は特別に私で止めておきます…」と言い、机に行儀良く置かれたカンニング用紙を父親に手渡した。誰かが死んだような重たい空気の母親の運転する帰りの車中、私は”もう2度と自分のした事で父親を謝らすようなことはしない“と心の中で誓った。
その数か月後、学年末試験でカンニングしなかった優秀な私は、最終日に学校近辺で喫煙を見付かり、再び、親呼び出しとなったのだった…。

nob morley
吉本新喜劇所属。新喜劇は3月1日で50周年。その大きなお笑いの歴史の1ページに参加できる喜びを噛締めてたら締切りに間に合わないとこでした。

最終更新日 : [03/05]
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