気分は生活習慣病

125「些少の詐称は多少了承?」

初日こそ遅刻したが、その後は体が慣れ出したのか、殆ど遅刻しなくなった早朝6時から2時間だけのアルバイト。

普通アルバイトとして雇用して貰う為には4時間以上の勤務時間が最低条件であったりするのだが、私は、当然のように面接時にそれを求める面接官に対して頑なに2時間以上働くことは出来ないと断った。それだけ、雇って貰える自信があったという訳ではなかったが、本来皆が嫌がる早朝からの業務を喜んで請け負う人間を、"開店スタッフ急募“と書かれたポスターを店前に大きく貼り出している所が、採用しない筈はないと踏んでいた。自分は『大学受験浪人生』であって、決して"フリーター“のような使い勝手の良い言葉で一纏めにされるような状況では無い。学生の本分が"勉強“であるならば、浪人生の本分は"学生以上の勉強“である。単に起床する為だけのバイトに一日の限られた時間の多くを費やす訳にはいかない。店側の要望を断固として受け入れない私に、面接官の副店長は明らかに濁った表情を向けて理由を訊いてきた。

これの答えを私はちゃんと用意していた。

「9時から学校があるので…」

これを言えば、店側としては何も言えなくなるであろうと私は信じていた。

"浪人生が学校? あぁ〜、予備校のこと!“普通の人ならそう思うであろうが、私は予備校に通わぬ自宅浪人、『宅浪』。

でわ、学校とは…?

私が店側に提出した履歴書には、本来なら「○○高校卒業…以上、学歴」と書かれているのが当然であるのだが、「○○高校卒業、△△大学□□学部入学、現在に至る」と書かれていた。いや、自分でそう書いたのだ。浪人生の私は、履歴書上だけ大学生であると装った。これは明らかな経歴詐称であり、罪深きことである。然し、履歴書の虚偽記載は、契約上の信義則違反に留まり、これを理由に刑事責任を追及することは認められていないのである。そこまで全て知った上での虚偽記載では決してない。バイトを探している時間すら勿体無い状況である故、他を探している場合ではなく、何としてでも其処で早朝2時間だけ労働という特別待遇を認められた上で採用して貰わなければならない、その為には、浪人生よりも格段に社会的立場上優位な大学生の方が採用され易いであろうという純粋な考えでのことである。

それでも、白紙の履歴書を前に右手にペンを持つと正直なところ流石に躊躇った。然し、店頭の募集広告に高校生…時給¥650〜、大学生…¥750〜と書かれており、自分が正直に浪人生と名乗り、店側に"高校生“に区分けされでもしたら…という本来の目的から外れた所で妙な金銭欲が芽生え、それが危機感という花を咲かせたかと思うと、私の右手に"△△大学□□学部入学“と思い切り書かせた。

そして、これ程までに自分の思い通りになることがあるのだと、我が身に危険を感じるぐらいに全てが上手くいき、特別待遇のOnly 2 Hours労働大学生賃金早朝時給百円増を獲得した。…それから3か月、職場に慣れ親しみ出した頃、私が最も恐れていた事が起こった。

[ 2009/09/04 ]

nob morley

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