気分は生活習慣病

126「身から出た詐偽」

"△大学□学部入学“という虚偽記載を履歴書に行った上で、大学生としてバイトを始めた浪人生の私は、ポテトを揚げる油で我が小指の第一関節を誤ってカラッと揚げてしまうという火傷を負ったり、"外側からしか開閉出来ないから、作業時は絶対扉を開放した状態に保つ事!“と厳しく注意されたマイナス20℃以下に保たれている冷凍倉庫のドアを作業中誤って閉めてしまい凍死しそうになったり―

店長が中で作業しているのを全く気付かず、単なる開けっ放しと勘違いし、風紀の乱れを正す様に丁寧に静かに扉を閉め、自分の持ち場に戻り労働に勤しんでいると、突如職場が騒々しくなり、行方不明者を探すかのように血相を変えて店内を幾名かの社員が徘徊し出した。私は嫌な予感がし、社員の目を盗み、あたかも其処に偶然用事があって立ち寄った風を装い、冷凍倉庫の扉を開けると、その店が世界的なハンバーガーショップであるにも関わらず、店長はカーネル・サンダースのような姿で身体を小刻みに震わせ蹲っており、私が純粋に驚いた声で「店長っ!」と声を掛けると、完全に体温を失った手で私の手を握り弱々しく「ありがとう!」と声を掛けてくれた。危うく人間一人を殺め掛けたりしながらも真剣に働いた。これで分かる様に職場は関西では専ら『マクド』と呼ばれる、○ドナルドであった。

慣れない仕事を次々に覚え、普通3時間程掛かる業務を2時間で完璧に出来るようになった。真面目に仕事に取り組む姿勢が、本当は犯人なのに、恩人と信じて疑わぬ店長に余計に気に入られ、度々、業務時間の延長を求められるようになるという、若干の逆効果にも見舞われるようになったが、仕事自体は順調にこなしていった。

ある日、昼担当のチーフマネージャーが早朝担当になり、私と初めて顔を合わすことになった。目元に優しさと厳しさを同時に併せ持った端整な顔立ちの彼は、「君、俺と同じ△大学らしいな」と話し掛けて来た。その言葉には疑いの気持ちは含まれていなかった。それを瞬時に察し、安堵感を含めた軽快なトーンで元気良く「はい。△大学です!」と答えると、「学部は?」と同大学の人間に対する共通項を見出す質問を投げ掛けて来た。正直、その時の私は自分が何大学の名前を書いたかはしかと覚えていても、学部の名前までは覚えていなかった。かと言って、自分が所属している学部を答えられない大学生など此の世には存在しない、この問いこそ最も瞬時に答えなければならない質問である。履歴書に書いた□学部がそれかは分からぬまま、私は若干の破れかぶれな気持ちを胸に「経営学部です!」と答えた。「そんなんウチの大学無いけど!」と言われたらお終いのところ、「俺と一緒やん!」と返ってきた。

「良かったぁ〜。あった!」と安心し切った表情で彼の目を見ると、それはかなりの疑いに満ちていて「学校で見たことないな」と自然と言われた。その瞬間、逃げ出したくなったが、何とかしてその場を遣り込めようと思い、必死に頭の中の引き出しを片っ端から開け、最良の言葉を引っ張り出した。

「僕、大学辞めました」

外の太陽はいつもに増して眩しかった。

[ 2009/09/18 ]

nob morley
今月27日に大阪でイベントをやります。カナダからわざわざ来る必要はありませんが、もしそんな人がいたら、例え男でも愛しちゃうかも・・・

前の投稿

次の投稿

▲PAGE TOP