気分は生活習慣病

133「大学受験勝利作戦」

長年夢に描き続けていた大学とは掛け離れているとは言え、高校在学時の成績から考えれば、たった1年浪人しただけで、私が国立大学に進学出来るなど、恐らく神様ですら予想していなかったであろう奇跡であった。確かに血の滲み出る様な辛い毎日の浪人生活ではあった。毎朝5時半に起床し、”起きてから2時間は頭は回転しない“という誰からの言い伝えかも分からぬ言葉を真に受けたように、早朝2時間だけのバイトをこなし、その後、定時に食事を摂取しながらの計12時間の勉強。自宅とは云え、タイムスケジュールに沿った、ほぼ刑務所のような生活を毎日繰り返していたのは事実である。

然し、その生活を心の底から辛いと思ったことは1度…以上あった。 1度や2度どころでは無い。毎日が辛く”諦め“との葛藤であった。芸人になりたい筈の自分が何故大学受験と戦っているのか意味が分からなくなる瞬間が実に多く、母親の涙を憎む(118119話参照)以上に、自分が自身を産み落としてくれた女性の瞳から零れる塩気の混じった滴に情を感じ、それにほだされたことにより、強気に反対を押し切り芸人の世界に飛び込めなくなった己の不甲斐無さを呪った。

然し、”乗り掛かった船“と云うより”自分で漕ぎ出した舟“であるが故に、小学生の時、調子に乗っていじめられっ子に仲間と一緒になり喧嘩を吹っ掛け、私一人だけが返り討ちに遭い、次から次に涙が勝手に出て来て止まらなくなるぐらいボコボコに殴られても”上を向いて歩こう“の歌詞の一節を参考するかの如く、上を向いて”涙が零れないように“し、『泣いた方が負け』という子どもの喧嘩のルールでは完全に敗者であるにも関わらず、必死に笑顔を見せながら「もうちょっとで本気出す所やったわ!」と平然と言い放つぐらいの負けず嫌いを謳う人間としては、途中で諦める訳にはいかず、確実に向こう岸まで辿り着かなくてはならなかった。ただ、難儀なことに、バイト先に妙な嘘を吐いてしまっている(127話参照)以上、その向こう岸のグレードもかなりのものでないと許して貰えない状況で、最低限、辞めたと虚言を働いた私学よりも学費が安くなくてはならず、となると、多少偏差値が低くても説得力のある国公立への進学が理想となった。

国公立の場合、センター試験なるものを必ず受験しなくてはならず、また基本的には英国数理社の5教科受験が必須である為、私学受験の場合の(選択する学部によって教科こそ異なるものの)基本3教科受験に比べれば、遥かに険しい道となる。前回のセンター試験で緊張ではなく、単なる学力不足で散々な結果に終わった私は、必ず良い結果を出さなくてはならなかった。

然し、試験直前に受けた模試の結果は合格を確約するには程遠く、”One More浪人決定!“な感じであった。それ故、何とか良き結果を出す為の方法を必死で考える必要があった。そして熟考の末、脳みそから搾り出された一案は、『自分の成績を上げるのではなく、他人の成績を無理矢理下げることにより、自分の成績を如何にも上なように見せる』という作戦であった。

そして、その作戦の内容とは…。

[ 2010/01/08 ]

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。本年もどうぞ宜しくお願いします。1月31日にイベントをします。日本に帰る予定のある方は是非、大阪のNGKまで〜。

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