気分は生活習慣病

139「馬鹿な子も絶対に真似をしないで
下さい」

英語の試験前に英字新聞を(さも毎日読んでいるかのように)大きく広げて読み、(…いや、実際読める訳がないので、新聞を読みながらつい言ってしまいそうな"マジで?“"えらいこっちゃ!“的なワードを何となく英語で言いながら、せめて読んでいるフリだけして)周囲にネイティブ並みの英語力が自分に備わっている(かも知れない)ことを見せ付けた。

続けて、国語の試験前には広辞苑を取り出し、(昨日まで読んだ小説のつづきを読むかの如く)或る頁で読み耽り出すと、(…や、耽ると云うより、老けるのでは無いかと不安になる程「こんなにも知らない日本語が世の中にはまだまだ存在しているのか」と思い知らされると)自然に意味深な笑みがこぼれ、(実際は偶然開けたページに載っていた数々の言葉が余りにも分からなさ過ぎて、逆に笑ってしまっただけなのに)それを見た周囲が、私の国語力を歴史的文豪である三島由紀夫以上(かも知れない)と思い込んだ(筈)。

そして、数学の試験前、徐に取り出したソロ盤で(さもソロ盤有段者のように)暗算のイメトレをすると、(…いや、イメトレと言っても、実際は計算をイメージしているのではなく、テレビで見たことのある超速暗算のチャンピオンのようなソロ盤の扱い方を熟知した人の所作をイメージしながら、何となくそれっぽく見えるように意識しながら)空中で素早く動く私の手を見た周囲は、(別の視点から見れば、リハビリのトレーニングのようにすら見えるのに)私に途轍もない計算能力が備わっている(のだろう)と思った(に違いない)。

社会に至っては、(日本史・世界史・地理の中から得意な科目を選択するにも関わらず)世界地図を大きく広げ、国名とその国の首都を(さも自分が其処に行ったことがあるかのように)口に出しては、「ジョンは元気にしてるかなぁ〜」「そういや最近イノビッチから国際電話無いなぁ〜」と、それぞれの国に在住する(であろう)人の名前を言っては気に掛けた(芝居をした)。すると、周囲の殆どが(地理以外を選択するからなのか)何の反応も示さなくなった。

前日に考えた作戦の勢いは"社会“の前で一気に失速した。英語と国語は、作戦を思い付く切っ掛けにもなったぐらいであるから、そうそう失敗することは無いだろうと信じていた。数学でのソロ盤は安易ながらも、何とか手応えを得ることが出来た(と、思っている)。然し、社会での世界地図は(お笑い言語で云うと)完全にスベッた。

作戦の中で一番悩んだのは、理科だった。理科が得意であると周囲に見せる為には…と考え思い付くことと云えば、化学実験か解剖ぐらいのもので、どちらも試験会場で実行するにはリスクが高い(と云うよりも、薬品を入手か、フナかウシガエルを捕獲か、と考えた段階で翌日の試験に間に合う筈が無い)。そこで思い付いたのが…

最後の理科の試験前、私は鞄の中に入っている唯一の未使用アイテム、数珠と(家に偶然あった)小さな大仏の置物を取り出し、机に丁寧に大仏を置き、数珠を手に、「大仏さ〜ん! 志望校合格頼んまっせ〜っ!」と、苦肉の策の『神頼み』をした。これが、周囲に物凄く(試験だけに)ウケた。

[ 2010/04/02 ]

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。今回のコラムは、はじめにカッコ内を飛ばして読むと2度楽しめる仕組みになってございます。

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