気分は生活習慣病

140「喜んでくれる筈の人」

1年間毎日12時間勉強をした身を削るような浪人生活から私が得たものは、高校時代よりも格段に賢くなった頭脳では無く、1年前とほぼ変わらない偏差値であった為に思い付いた『他人の成績を何としてでも下げ、自分の成績を何となく上なように見せる』というテロリズム的な考えから生まれた不謹慎極まりない数々の作戦は、最終的に受験会場で周囲が声を出して笑うぐらいに緊張を解してしまうという想定外の結果に終わった。
そして肝心の私の試験結果は…

作戦を計画通り実行するのに、休憩時間ですら全ての神経を使ってしまう為に、散々たる結果になり兼ねないと危惧していた。然し、単にマークシート式で私が黒く塗り潰した箇所が奇跡的に合っていただけなのか、それとも、妙に試験中、集中出来ていたこともあり普段どう足掻いても引き出す事の出来ない潜在的な能力を発揮出来たということなのか、予想に大きく反して、国語に至っては200点満点中196点というほぼ完璧な点数を獲得することに成功し、苦手な社会が…中学入学後一番最初の中間テストで100点満点中8点という、逆に天文学的とも云える数字を答案用紙の右上角に書かれた過去を払拭するぐらいの100点満点中58点。…いや、大したことないがなっ!
それ以後、色んな気の迷い(vol.132参照)と葛藤こそあれ、非国民的な行いばかりしてきた(もしかしたら非国民的な行いしかしてこなかったかも知れぬ)私が、厚かましくも国費を使って勉強出来る、親にあまり負担を掛けない学費の安い『国立大学』を選択し、しかも、非人道的な行いばかりしてきた(もしかしたら非人道的な行いしかしてこなかったかも知れぬ)人間の分際で、『教育学部』という教育者を養成する学部に、昔とった杵柄とも言うべく絵画力を利用して、『小学校の図工の先生になる為の場所』に合格し、ワンモア浪人生活だけは免れられる状況に辿り着けた。

当然、この合格には母は涙を流して喜び、父はその母の涙に(家業を継ぐ為の学校とは全く関係の無い大学なだけに)複雑な感情を抱きながらも喜んでくれた。そして、もう一人、親並みに私のこの合格を心から喜んでくれる筈の人が…高校の恩師だった。

私の3年間の成績と行いを全て知っている恩師。クラス替えの時、「どの先生も自分のクラスにお前を欲しがらなかったから俺が今年もお前の担任や!」と、教師として絶対云ってはいけない事を平気で言った恩師。私のカンニングを発見した恩師(vol.107参照)。私が喫煙を見付かり校長から無期停学処分を言い渡されるのを見届けていた恩師(vol.115参照)。私が「芸人になりたい!」と告白して泣いた母に家から追い出された恩師(vol.118参照)。卒業式の時に私の名前を呼んでくれた恩師。

そんな恩師のことだ、私の合格を知れば、余程の努力をしたのだと涙を流し「良くやった!」と褒め、我が事のように喜んでくれるに違いない。1年振りに見る恩師は随分私が苦労を掛けていたのか少し若返ったように見えた。そして、私からの合格報告を受けると、顔をしかめ、「お前が教育大学?世も末やっ!」と本気で嘆き、怒り出した。

[ 2010/04/16 ]

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。今回のは、『参照』が多いですが、これを機に過去の作品を読んでみて下さい。
www.bitslounge.com/column/

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