気分は生活習慣病

142「それでも綺麗なお姉さんが好きですねん」

恋愛に関して意外に乙女チックな思考が、CCBの名曲並みに止まらなくなってしまう少年Nは、「誰か! 乙女チック止めて!」とは決して言わずに、それが自分の恋愛観なのだと受け入れ、相性占いとかを相手に内緒で抵抗無くやっていた。
彼女に内緒でやった相性占いの結果が"最悪“と出たにも関わらず、Nは年上女性と別れようとは一切考えなかった。それは、何としてでもこの女性で大人の世界へ入ろうという、強固な意志が頑なに彼の思考を止めていたからだ。そんな彼に彼女が恥ずかしそうに「彼氏が出来たらしようと思ってたことがあるの」と言って来た。一瞬にして高まる心拍数を抑えきれず、生唾を飲み込み、次の言葉を期待した。脳の中にセッ○スの文字が走り回っている状態の彼に「ピクニック」という彼女の言葉は一瞬、気を失いそうなぐらいの衝撃を与え掛けた。
確かに拍子抜けはしたが、"彼氏の為にお弁当を作って、目の前で食べて貰うのが夢“だと言う彼女に対し、この世にまだこんな純粋な心の女性が居るのだと感動してしまったNはピクニックの約束をした。
数日後、自作のお弁当を持って、公園に現れた彼女は憂いに満ちていた。それでも、少し申し訳無さそうに「時間があまり無かったから、サンドウィッチになっちゃった」と断った。無類のタマゴサンド好きのNには逆にその断りが可愛く響き、ホテルでのセッ○スよりも公園でのピクニックの方が楽しいのかも知れぬと思え、たとえ2人の相性が占い上で悪くとも、こいつを一生大切にしたるとすら思えた。期待に満ちた表情でA5サイズの弁当箱を開けると、所狭しと詰め込まれていたのは全て『ハムサンド』だった。見たところ10個はあった。そして、彼女は「私は家で食べて来たから、全部食べてね!」と元気良く言った。
え? "彼氏の為にお弁当を作って、目の前で食べて貰うのが夢“ってそういう意味? 一緒に楽しく食べるんじゃなくて?と悲哀に満ちた表情で訴え掛けたかったが、彼女の指に絆創膏を見付けてしまった以上、何も口に出せず、裏切られた気持ちでいっぱいになりながらも、一つ取り、自分の口を封じるように一気に押し込んだ。すると、そのお弁当は二段になっていて、下からまた新たなサンドウィッチが姿を現した。それに気付いた時、好きな物は後に取って置くタイプの自分に合わせて、彼女は下にタマゴサンドを入れてきてくれたんだ! と、彼女に対し恨みを抱いた自分を恥じながら、下の段を覗き込んだ。すると、それはあろうことかまたハムサンドだった。
計20個以上はあるハムサンドを一人で食べなくてはならない苦境に立たされ、無理矢理押し込んだ1個目のハムサンドでむせ返るNに、彼女は優しく「ちゃんと飲み物も買って来たよ!」と言ってビニール袋に手を突っ込んだ。その姿を見て、「なんて気が利く女なんや!」と感嘆し、それが午後の紅茶のミルクティーであれば最高だ! と少し我が侭な気持ちになりそうな自分を必死で抑えていた。そして、彼女が「はい!」と言って差し出したのは"お〜いお茶! “…緑茶だった。サンドウィッチに緑茶…。
その相性は2人の相性以上に最悪だった。

[ 2010/05/21 ]

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。現在、脳みそが疲労困憊するくらい忙しい日々を送っているらしいノブモーリー。今回も締切に間に合わず…。

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