気分は生活習慣病

145「綺麗なお姉さんに突き落とされました」

3年間学び舎を共にした友達との友情に満ちた卒業旅行よりも、ほんの数か月前に付き合うようになった年上女性との欲情に溢れた"卒業旅行“という名目の、『何』を経験する為だけの―もしかしたら本当の意味での"卒業“になり得る―2泊3日の旅行を優先し、友達から「折角みんなで旅行に行こうと思ってたのに…」と悔やまれることもなく、何なら「みんなで卒業旅行でも行こうや!」と誘われることもなく、何一つ後ろ髪を引かれる思いをせず、一抹の寂しさと切なさを感じながらも、逆に断ることにより"ノリの悪い人間だ“と思われる必要がなくなったと気持ちを無理矢理プラスに修正することにより芽生えた若干の安堵感を胸中に秘めながら、少年Nは"大人“になるべく、年上女性との旅行に出掛けた。
片時も握った彼女の手を離さずに目的地に着いたNは、観光など一切せずに予約していたホテルに直行し、チェックイン、彼女のことを"奥様“と呼ぶフロントマンに少しイラっとしたが、それが周囲には、確実に『何』をしても許される2人に映っているのだということに自信を持てた。
古びたホテルの木製扉がはっきりと神聖な大人への扉に見え、鍵穴にフロントで渡された鍵をゆっくりと差し込み、奥の方で鍵の複雑な凹凸がしっかりとかみ合う手応えを指先に感じた瞬間、それが今から自分が肉体を持ってして行なう行為に思え、異様に心拍数が上昇して行くのが分かった。差し込んだ鍵を捻り開錠し、ゆっくりと扉を開け、レディーファーストよろしく彼女を先に中へと導き、部屋の構造を確認する彼女を背後から襲い、彼女が路上で「痴漢!」と叫んだように悲鳴を上げられたらどうしようという不安はあったが、勢い良くベッドに向かって押し倒し、彼女の口から音が漏れる前にNは自分の唇でそれを封じた。そして、彼女の着衣を一枚ずつスムーズに剥がしていきながら、彼自身も比例するように徐々に生まれたままの姿になっていき、『何』に至るまでの準備を整えた。彼女の全身から拒否する全ての力が抜け去るに連れ、彼の鼓動は弥が上にも早まる。後は、彼女の鍵穴に彼が持つ簡単な凹凸の鍵を差し込むだけだったが、恥ずかしがる彼女を気遣う為に部屋はかなり暗くしてあり、それが故にきちんと鍵穴を目で確認することは出来ず、恐らくこの辺りであろうというところに鍵を近付けていき、先端が今まで触れたことの無いモノに優しく当たった時、脊髄に電流が流れ、動物的感覚が"其処!“と教えてくれた。
彼女の顔を見ると準備万端とでも言うべく瞳は堅く閉じられている。「行くよ!」と弾みを付け、緊張する身体を彼女に向けて一気に押し込もうとしたとき、『ドン』という音が全身に響いたかと思えば、ベッドの下に素っ裸の状態で転がり落ちていた。状況が全く読み取れず呆気に取られた状態で色々なことを確認すると、彼女は両手を突き出した状態で泣いており、どうやら彼女の手によってベッド下に突き飛ばされたようだ。原因が全く分からないでいると、突然彼女が泣きながら叫び出した。
「つつみさんが忘れられへん!」
―いや、つつみさんて誰?!―

nob morley
吉本新喜劇所属のお笑い芸人。左下半身に走る激痛の原因が坐骨神経痛と分かったはいいが、痛みはエスカレート、今や殺して欲しい程の痛みでのた打ち回っているそうだ。

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