気分は生活習慣病

151「君のなわ?」

高校3年の時に喫煙による停学処分を受けた程の周囲から多少『ワル』扱いされていて、”クール“こそ男の美学、憧れは常に”ジェームス・ディーン“であった自分がまさかその1年後、跳んだ回数を声に出して数えながら大縄跳びをアグレッシブに笑みを浮かべてやっているとは思いもしなかった。しかも、誰よりも先に大縄の中に入り、自分の運動神経の高さをアピールするかの如く軽快に、それでいて自分の失敗でチームが負けるような恥ずかしいことだけは絶対にあってはならないとニコチンが行き届いた足先を同じくニコチンが回り切った太腿で必死に何度も引き上げテンポ良く大縄の回転に合わせて跳ぶなんて、目の前に余程好きな人がいるとかでない限りする筈がなかった…それがその筈があったのだ。
跳ぶ度に上下に揺れる私の視界には常に一人の名も知らぬ女性が収まっていた。
その女性は両手でしっかり持った縄を全身を使いテンポ良く何度も回していた。私はその女性から一秒たりとも視線を外すことはなかった。出来ることなら向かい合わせに座り、ただただ彼女を眺めたかった。今まで出会った人の中でこれ程までに色の白い女性はよく考えれば見たことがあったが、白人以外となると初めてなぐらい、美しくまるで天使のように見えた。
図書館で偶然同じ本に手が行きお互いの手が触れ”ハッ!“とした後”キュン“となるようなベタな出会いに憧れていた私にとって、自分が回そうと手に取った縄を「私が回す」と取りに来るなんて、もう少しだけお互いの時間がズレていて、私が遅く彼女が早くその縄を取ろうとしたなら、完璧に2人の手は触れ合っていた…ただ、目標物が縄という長い面積を持つものであるから、同じポイントを見知らぬ2人が偶然同時に手に取る可能性は皆無に近い。それ故、単に手と手で縄を持つ感じになるのが一般的であろう…いや、そんな数学的見解などどうでもいい!彼女は私の方に縄を取りに来た。確か逆側も男だった。それでも、私の方に取りに来た。ということは、それだけ、私に対して興味があった…ただ、私と一緒に跳んでいる何名かの後ろに彼女と同じタイミングで縄を回しているのは男性、そいつは我々が跳び続けている間ずっと彼女と縄で繋がっている状態、もしかしたら、彼女はそいつと縄を回したいが為に私の方に取りに来たのかも…いや、違う!違う筈だ。でも、気になる。どんな奴が彼女と一緒に回しているのか、然し、今はそんなものに気を取られている場合ではない、何よりも失敗せず跳び続けることだ、それにしても気になる、もぅこうなったらチラっとだけ!と、体が宙に浮いた瞬間クルっと振り向いた。すると、見えたのは同じように一生懸命に跳び続けている人々の様子だけでその後ろに居る人間までは見えなかった。仕方無い、もう一度!と身を屈め電車の窓から顔を出すような格好で振り向くとオランウータンの赤ちゃんみたいな男が視界に入った瞬間、こめかみをえぐるような鋭い痛みが右側頭部に走ったかと思えば、失明したのではと感じる程の激痛が顔面に広がった。私はあろうことか足でなく、頭部で回転する縄を引っ掛けてしまった。

[ 2010/10/01 ]

nob morley
先日、私を精神的に支えてくれた祖母が亡くなりました。それ以降、トイレの神様を聞く度に涙してしまいます。もし気になる方は、YouTubeで検索してみて下さい。

前の投稿

次の投稿

▲PAGE TOP