気分は生活習慣病

159 到底、まだまだ道程

『自分が想いを寄せている人が、自分にも想いを寄せていた』という“思いも寄らぬ”展開に私は其処が自分の家であるのにも関わらず、何をどうして良いのか勝手が全く分からなくなってしまった。
脳内で準備していた状況と真逆のシチュエーション。友人が私に興味があるから紹介したいという名目上に開かれた筈の夜会が、単なる私の勘違いで、今までどんな人と付き合ってきただの誰が格好良いだの可愛いだのの話で盛り上がっていたら突然、友人が便所に行っている間に「私が一番気に入ってんのはアンタやで!」と、"あの人"自身が私に気があると告白してきた。友人が戻って来ると“あの人”は「もぅ言いたいこと言い終わったよ!」と“これ以上長居する必要は無い”的な意味合いを込めサラっと言った。どうやらこれは全て“あの人”の手の内で行なわれていたことのようで、便所のタイミングも全て計られたものだったのだ。友人は“あの人”を親しみを込め普通の女子がするように名前で示し、叶姉妹の姉の暴走を妹が優しくフォローするように「○○は貴方のこと随分気に入ってるみたいよ!」と、刺激的な助言を叱りつけるように言った。
何かの本で読んだ痴女が集う自由恋愛クラブを髣髴とさせる、その状況は私の脳内CPUを完全に計算処理不能にしてしまった。何故なら“あの人”には『彼氏』という存在がきちんと居て、またその事を友人も知っていたからだ。一瞬考えてはならない事を考えてしまい、大きく頭を何度も強く振り、それを脳内から消そうと試みた。然し、いやらしい意味合いは全く無い『筆下ろし』という言葉が脳みそから漏れてきて眼球の裏側をグングン殴ってくる。
年齢は一つ下だが、そんな事はこの際どうでも良く、経験者が未経験者に軽く指南する感じで導いてくれればそれで良かった。意中の人に彼氏が居ようが、それをないがしろに有耶無耶に紛れ込ませ、念願の“書初め”に持っていければ…ここまで別に大事に守ってきた訳でもない操を最も理想的な“好きな人と”破ることが出来る。
こうなれば次は、友人が再度気を利かし急に用事を思い出し帰宅し我々を2人っきりにしてくれるのだろうと固唾を呑んで待っていると「そろそろ帰るわ!」と“あの人”が切り出した。一瞬曇った表情になった私に「バス停まで送ってや!」と遠慮なく注文、何故か私はほぼ面識の無い女性を一人家に残すという都会派思考では考えられない無用心な状態で“あの人”をバス停まで送ることに。道中殆ど2人の会話が弾むことは無かったが、私は終始「何で彼氏居てんねん!」と苛立ちを“あの人”にぶつけていた。そして、やがてバスが近付き停車しようとする時に「でも、今は彼氏よりもアンタの方が気になる!」と悪戯な顔でなく笑顔で言ってきた。私はすぐさま「何でやねん?」とツッコミの意味合いも込めて大きな声で訊き返すと、妙な甲高い“ピー”という電子音と共にバスの扉が開き、その入口からゆっくりと乗り込み、もう少しで乗車完了というところで振り返り「セックスが上手そうやから!」と恥ずかしそうに言った。唖然と閉まっていく扉を見届け囁いた。「俺、童貞やけど…」。

[ 2011/02/04 ]

nob morley
もうそろそろそちらはナイアガラの滝が凍るような季節でございますか? カナダで冬を越してからどういう訳か日本でも室内ではTシャツになる癖が付いてしまいました。

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