気分は生活習慣病

164 柄悪男VS格好悪男

最も緊迫した緊張感パンパンの状況で"階を間違える"という在り得ないミスにより、逆に余裕を持って目的の部屋のインターホンを鳴らすことが出来た。

鉄扉の向こう側から「はい!」という元気の無いあの人の声。開錠される金属音の後、ゆっくりと扉が開かれると、顔色の優れないあの人の姿が其処にあり、「ごめんね」と弱々しく囁き、「どうぞ、上がって!」と今にも泣き出しそうな声で言った。靴を脱ぎ、いざと云うときに逃げ易いように靴の向きを丁寧に揃え「お邪魔します!」の一言と共に部屋の中へと入ると、片膝を立ててダルそうに地べたに座り、タバコを吸いながら「すみませんねぇ〜、こんな時間に…」と嫌味満開で言い放つ、如何にも柄の悪い男が其処に居た。

「いや"すみません"なんか絶対思てないやんっ!」とつっこめる状況では決して無い。それよりも相手をちゃんと見られない。然し、あの人に自分が怯んでいる格好の悪いところを見せる訳にはいかない。"いつでもやったんぞ!"精神で、その男の前にドシンっと乱雑に座った…つもりが、膝に手を置いた時の感じで、自分が知らぬ間に『正座』をしていることに気付き、己の育ちの良さを呪った。

何から事を進めて良いのか分からないながら、何かしらの突破口を掴もうと眼前の男に目を向けると、下は薄紫のゆったりスラックスに、上はバブル期に流行ったベルサーチ柄を模した完全パチもん品無し長袖シャツを胸元を肌蹴さした状態で着ており、髪型はテンパなのかパンチ崩れなのか分からない荒い仕上がりで左のこめかみ辺りの一部分だけ結構大きい範囲で白髪になっており、狙ってやってるなら確実に滑っているヘアスタイルで、顔はフジテレビ系のクイズ番組"カルトQ"の司会で脚光を浴びた『うじきつよし』そっくりだった。「なんやこのショボくれたチンピラみたいな奴?」と心の中で罵倒した瞬間、男の方から物凄くイキりながら喋り掛けてきた。「どうも!俺、こいつの彼氏で"うじきつよし"って言います!」

一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。「え?まさか、本人?…てことは、"子供ばんど"復活の相談を俺に?」と、素っ頓狂な考えが拡がり始めた時「よく似てるって言われるんで…」と、ウケ狙いで言った言葉が余りに反応が無かったので少し不安になったのか必死にその場を取り繕った。

私の頭の中には「何やこいつ?」と云う言葉しか無かった。友達を見ればその人が分かるというのなら、あの人はこんな奴と結婚を約束するような、人の見る目の全く無い女ということになる。何とも悲しい現実ではあるが、コイツと私を天秤に掛けると"コイツ"に軍配が上がるということが、許せなく哀しく悔しい。何とかコイツより自分の方が上である事をアピールせねば!と思っていると、突然"うじき"が訊いてきた。「ここに来るのは何回目ですか?」

その瞬間、男の後ろで佇むあの人と目が合った。正直に"2回目"などと言える筈が無い。「初めてです」と自信を持って力強く答えると、「じゃぁどうして道も教えていないのに此処に来れたんですか?」
―完全に『うじき』の方が上だった。

[ 2011/04/15 ]

nob morley
カナダから見た日本が今どういう風に映ってるのか気になりますが、日本は今本当に大変です。
然し、日本は絶対元気になると信じています。
海の向こう側の日本人の皆さん、どうか力を下さい!

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