のんびりアート

031「ビーイング・シーン」

クイーン・ストリートの西、バサーストからダファリン・ストリートまでには、ギャラリーがたくさんある。大きいのではMOCCA(ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・カナディアン・アート)、天井が高く大きな空間で、特大クラスの絵を見るのにもってこいの所だ。小さいのでは、つい先日まで何かのお店だったのが、次のテナントが見つかるまでギャラリースペースでいようネと壁をまっ白に塗られた部屋などなど、それぞれのもくろみや都合が感じられるのもある。

5年ぐらい前になるだろうか、その日ウールフィッツという画材屋さんで買物をしての帰り道、クイーン西を東に向って歩いていた。丁度オシントン・アベニューとの角にさしかかった時にわか雨が降って来た。僕はすかさず道路南側にある、大きな建物にかけ込んだ。この建物のたたずまい、内容はずっと昔から知っていたけれど、一度も正面入口のドアを押して中に入った事がなかったのだ。

中に入った僕はおどろいた。入ってすぐのホールから始まって奥にずっと続く廊下の両側に、大小さまざまの絵がフレームに入れられて展示されていたのだ。ギャラリーになっていたのだ!!そしてそれらを見た僕は、さらにおどろいてしまった。みんないい絵なのだもの。すばらしいカタログ本も作られていて、すでに数年前から続いている様子。ウワー、もっと早く気がつけば良かったなあと残念に思ったのだった。

油彩、水彩、アクリル、えん筆、ボールペン、そしてミックスミディアなど、それぞれの材料の持ち味を上手に生かした表現、特に青のボールペンだけで描いた絵にはなんとも言えない新鮮さとなつかしさを感じたのだった(これと同じ表現方法を去年のOCAD卒業展の絵の中に見つけた。描いた人はもちろん別人、こちらは赤のボールペンで細かいディテール、陰影が描き込んであり、展の中で一番好きな作品になった)。

こわがりのない大胆な省略とディフォルメ、描く対象へのやさしい近づき。それはプリミティブな絵だったり、モダンな作風だったりする。そして、何よりもすばらしいのは、描いた人それぞれの"何かを表現したい“"何かをわかって欲しい “そんな気持が絵の中に悲しい程に込められていて、それが伝わって来るのだった(これは絵としてとても大切な要素なのに、この頃の絵かきさん達の絵からはあまり感じられない…?)。

BEING SCENEというタイトルのこの展示会は1年ごとに絵が替わり毎年開かれている。主催はCAMH(センター・フォー・アディクション・アンド・メンタル・ヘルス)、このセンターである。描いた人はセンターにいる人、あるいはかかわりのあった人など。そして、このかいわいでは僕の一番好きな展示会で、友達をつれて毎年見に行っている。

[ 2009/07/17 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。1971年渡加。Esquire、The Financial Post Magazine、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画『The Fly』『M Butterfly』にも作品提供する。

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