のんびりアート

034「ポスターのこと」

僕の、仕事用の資料本の中に「ポーランド・ポスター・1970〜1978」、そして、「アメリカン・ポスター・1945〜1975」という2冊の本がある。どちらも厚い本で、その示された年代のポスターがたくさん載っている。アメリカのポスターの方は、年代にも幅があるので、絵画、イラストレーション、写真などが、目的に合わせて多様に使われていて、全体的に明るくおもしろい。ポーランドのポスターは、表現者の主張が強く出ていて、時には過激で、時にはとても雄弁である。

ポーランドのポスターは、その表現の独自性と見る側に強く語りかける物語り性が好まれ、60年代後半〜70年代の広告作り人やデザイナーに大きな影響を与えている。映画、演劇ポスター、政府行事の案内ポスター、そして、サーカスのポスターなど、それらは一党独裁の時代背景の中で制作され、政府の援助を受けるかわりに、きびしい検閲の目にさらされて発表されたものなのだ。そのためかは知らないけれど、とてもシュールな表現世界である。言葉と絵の関係が緊張していて、多くのものを語りかけてくる。中には怖さを感じてしまう様なものもあるがアート性が高く、そして深い(脱帽です)。

80年に、グラフィックデザイナーからイラストレーターへと、僕は仕事変えをやった訳だけれど、その頃、多くの絵の中で、一番ワクワクしたのがシュールな世界の絵。また、言葉のイミを絵の記号に表現する…そのメタファーのプロセスそのものがとてもシュールに思え、イラストの仕事が大好きになっていった。与えられたタイトル、短い言葉(長い文章も煮詰めれば短くなる)から絵を想い描く…その時の、イラストのアイデア発見、アイデアの表現方法など、僕はポーランドのポスターからも多くを教えられた(サンキュー!!)。

ポスターといえば…、僕がカナダに来てすぐの頃の70年代、ブロアーとバサーストにあるオネスト・エド店の西側むかいに、ポスターを売る店があった。中に入ると壁という壁にはすき間なく古い映画のポスターがはってあり、また、それらが積み上げられている所もあった。ほとんどがハリウッドの映画ポスターで(まれに、ポーランド・ポスターも見つかった!)、有名な俳優さん達の顔が大きく、あるいは全身像が写実イラストで描かれており、安っぽい印刷で刷られていた。でも、それらはとてもカッコよく美しく、目の前にパーッと突進してくるのだった。

ポスターといえば…、この頃のトロントのポスターはおもしろくない。写真を使ったのが多いけれど、それらもイメージバンクから借りた様な熱のないショットで、伝言のみを一方通行で発しているだけだ。

ポスターといえば…、時代と政治体制が大きく変ったポーランド、今はどんなポスターを作っているのだろうか?

[ 2009/10/16 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。1971年渡加。Esquire、The Financial Post Magazine、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画『The Fly』『M Butterfly』にも作品提供する。

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