のんびりアート

035「ビーバーさんへ」

先日、チェリービーチを通りぬけレスリー・スピットまで自転車で行く間に、2人の写生をしている姿を見かけました。どちらも60才前後の男と女の人で、それぞれが別の場所で絵筆を動かしていました。空は青空。こういった姿は、この頃なかなか見られないので、「アッ仲間がいる!」とうれしくなってしまいました。前に、こんな事もあったんですよ。その時は僕が目の前の風景を写生していた訳です。そこに父親とまだ子どもの息子さんが近づいて来て「うちの子に絵を見せてもらえないか…」と言うではありませんか。「どうぞ、どうぞ」という訳で、写生の様子を見ていたのですが、子どもさんに「こんなふうに、外で絵を描いた事あるの?」と聞いてみると、「ない」と答えます。じゃあ、もっと絵を見せてあげるヨ…という事で最初から終りまでスケッチブックの頁をめくったのでした。「楽しそうだネ」と言った父親の言葉が耳に残っていて、あの2人も絵を描くようになればいいナ…いつか…と思った訳です。

前おきが長くなってしまいましたが…、ビーバーさん、あの赤い浮橋の近くにある家からどこかに引越しされたのですか?ここ何年も姿を見ていないのと、毎年、冬が来る前に食料になる葉のついた枝が家の近くに集められますが、それらも今年は見えないので、どうしたんだろう?と心配に思った訳です。

心配になるのには理由があります。ここ、レスリー・スピットもトミー・トンプソン・パークと名前がついて久しくなりますが、その名前のためかは知らないけれど、近年の開発工事で、すっかり様子が変ってしまったからです。ボウボウと茂っていたやぶの中に、幅のある、こまかい砂利のしかれた道が長く造られ、大きな庭石が持ち込まれ、ブルドーザーの車輪の跡が広がっています。それとコーモラント(鵜)によるポプラ林の破壊(彼らは夏、木の上に巣を作るのですが酸性の強い排泄物を葉の上に落とすので林が根こそぎ枯れてしまう)、それは、もうアウト・オブ・コントロールの状態です。ビーバーさん達も大きな木を倒しますが、必ず新しい幹が同じ根から成長しますね(サスガ!)。

前は、深いやぶの中に、ビーバーさんや他の動物達が通った細道がいろいろ見つかって、その様子がかわいらしく、その細道をたどって行くと湖につながっていたりして、ワッ、この道でビーバーさん達が家族で木を運んだんだアと、その姿が想われたりしたのでした。そんな、動物達の生活圏である深いやぶがどんどんなくなっていくのが心配です。

「The Red Rock(A Graphic Fable)」というビーバーさんを主人公にした絵本を僕が作り出版できた時は力になってくれて本当にありがとうございました。また顔が見れるのを願っています。では、さようなら。

[ 2009/11/20 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。1971年渡加。Esquire、The Financial Post Magazine、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画『The Fly』『M Butterfly』にも作品提供する。

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