のんびりアート

036「あれも、これも...」

@マルセル・デュシャンという人は、大量生産の既製品で世に出回っている男性用便器に”泉“というタイトルをつけて展覧会で発表しました。

Aキリキリ・アンパンタンという人は、赤ペンキがパンパンにつまった風船を抱いて高いはしごの上から床のキャンバスに飛びおりて作品をつくりました。

Bミロヨ・ヨークネという人は、透明なガラス箱の中に頭を下に身をかがめて入り、すき間の部分を小石まじりの土で上まで一杯にして展示しました。

Cジャクソン・ポロックという人は、床の上に大きなキャンバスをひろげ、ペイント、ペンキなどを容器から直接に、あるいは長い絵筆でぶちまけたり垂らしたり、何重もの色の重なりの絵を描きました。

アッ、ちょっと待って下さい。@からCまで全部が正しい訳ではないんです…。さて、どれが「ン?」なのだろうか? Cは本当でアタリ。でも、この垂らす技法、彼が最初にやり始めた人なのかというとそうではなくて、ちまたの普通の人達が同じ方法で絵を描いたりしている。ただ彼の場合、キャンバスサイズをとてつもなく大きくし、”垂らす“という行為をとことんまで追究した事がすごい。Bは本当ではない。でも、これと同じコンセプトの立体をギャラリーで見ている。それは同じガラス箱の中に、一見して作り物とわかる人間の形と土砂が入っていた…。Aは正しくない(…と言いながらも誰かがやっていたりして? ケガをしないで下さい)。でも、似たようなのはある。その人はハダカの体にペイントを塗り、床に広げた紙の上に横になったり転がったりするのだ。つまりプリント作品。

@は正解の正解! これならみんな「ワタシにも出来そう」と思うでしょう。実際、彼の後に多くの類型アートが作られ、今もインスタレーションとかでそれが続いている…。そんな様子を見ると現代アートの”あれもこれもの何でもアリー“のルーツはデュシャンであったのかも??ピカソ、マチス達と同時代の彼は、他の人達がキャンバス上だけの絵に集中している時、”平面絵画“の不自由さから自由になろうと反芸術を唱えたのだった。アレッ、ワタシは手品のアレコレを書いてしまった様ですが…?そうなのです、デュシャンに「虚の謎」をかけられたその後のアートはずっと虚像の影の中で息をしているのです。

ところで、自然から離れた、人知で考えられたアイデアやシステムは、テーマが何であれ長い時間がたてば矛盾を生み呪縛に変わる。そして新鮮だった革新アートが、さらに文明全体までもが、今では頭打ちに縛られている。これからは、あれもこれもと引算し、自然の知恵に近づくしかない。

[ 2009/12/18 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。Esquire、The Financial Post 、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画『The Fly』『M Butterfly』にも作品提供する。サイトwww.tomionitto.com

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