のんびりアート

045「渡り鳥の心配」

草がボウボウと両側に茂った短い細道を通り、湖の岸辺に立った時、騒がしい音と一緒に沢山のコーモラントが飛び立った。そして、僕からの安全距離と思われるあたりの水面に次々と着水する。それら一瞬のざわめきの中で、慌てた様子だが、飛び立たない1羽のダックがいた。それもそのはず、彼女には5羽の小さな子がいてヨチヨチと泳いでいるのだった。
「ウワーッ、ちいさいの?!」僕の口から言葉が出る…その子達は本当に小さいのだった。時は8月14日。普通なら、子達は親の体形ぐらいまでに成長している時期なのだ。そして、これからの渡りにそなえ、1本1本の羽を丈夫にし、翼を広げたりする時なのだ。…そういえば、この前見た白鳥の子も小さかった。体の色が、まだピンクグレーで、背中の翼は20cmぐらい、広げればもっと大きくなるだろうが大空を飛べるというものではない。
僕の手もとに、「鳥の世界」「北米の鳥」「鳥の野外ガイド」などの本がある。それらは仕事の参考資料で大変役立っている。沢山の鳥を描いた。特に、ターンという水鳥を自分のトレードマークみたいにしていろんな絵の中に描き込んだ。それだから、ある人は「あの鳥が入っていたから君の絵だとわかった」。ある人は「君のスタイルと似ていたが、あの鳥が飛んでいないので君の絵ではないと思った」…などと言われた事もあったのだ。
ターンという鳥は、カモメより少し小さく、スリムで形が美しい。レスリースピットにもネスティング・エリアがある(数は前より減ったが)。水面上空から魚を見つけると、垂直ダイブしてつかまえる様子はかっこいい。結構アグレッシブで、近づきすぎて頭を突かれそうになった時もある。レスリースピットには沢山の種類の鳥がやって来て、夏の間に子育てをし、夏の終り、秋には南の方に飛んで行く。それは、いのちのルール、太古の昔から直線で続いている“決まり”である。
ところが…今年はメキシコ湾のオイルの問題がある。新聞によると、メキシコ湾は鳥の渡りの中継点、あるいは着地点として大切な地域なのだそうである。オイル汚染が残っている海域、浜辺などに着地した鳥達は???もしかして、来年は戻ってこない鳥もいるかもしれない…。 遅くハッチした5羽のダック、どのぐらい大きくなったろうか?仲間が南に飛んでいく時期に間にあうのだろうか?それとも、それとも、鳥達のメキシコ湾での危険をかわいそうに思い、地球は北半球を、今年だけ暖かくキープするのだろうか?5羽のダックは、それを知っていたりして…?

[ 2010/09/17 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。Esquire、The Financial Post 、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画「The Fly」「M Butterfly」にも作品提供する。サイトwww.tomionitto.com

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