のんびりアート

049「ウォールデン」

 

「ウォールデン」という本の事は、いつか書きたい書きたいと思いながらも、アートコラムにアート本でない本の紹介はできないなァ… と躊躇していたのだった。それが、自然の霊妙ないたずら、自然の味なはからいで、一気にアートコラムに近づいて来たのだ。

順を追って書く…。去年11月19日、マーケットで買った冷凍のサバを解凍し、丸ごとオーブンで焼いて食っていたところ、腹部からまだ消化されていないシシャモ2匹が出てきたのだった。おやマァ!!これは超ラッキーだんべ!!とビックリし、こんな事は2度とないだろうと直感すると、その様子を正確にスケッチしたのでした。… この時点で「ウォールデン」はまだ近づいていません。

ゲーリー・M・ダルトさんという人がいる。この人、今はやっていないらしいけれど、最近までの長い間グローブ&メール紙のアート評論のコラムを書いていた人で、前に何度か会った事がある。その彼が11月28日のインデックスG・グループ展のオープニングに、アーティストの一人として参加したのだ。

他の参加者の数人にサバのスケッチを見せて笑いを誘った後、僕はダルトさんの前に行った。サバのスケッチを見ながら僕の説明を笑顔で聞いていた彼は「ウォールデンを知っているかね?」と質問して来た。突然で僕は一瞬考えたけれど…「森の生活を書いた、ソローのウォールデンですか? それなら日本語の本で読んで知っています」と答えた。そこから先のダルトさんの話が興味深い。「ウォールデン」を書いた作家、思索家のソローさんは初めベジタリアンだったのだが、ある日、魚が魚を食べている現実、つまり僕のスケッチと同じ様子を見てしまい、それ以後ベジタリアンをやめてしまったらしいのだ。… これだけの話なのだけれど、僕はとてもうれしくなった。大好きな本と作家と僕のスケッチの絵柄が時空を超えてつながりを持ったのだもの。アートコラムで書ける様になったのだ!!

…自然は本当にイキな事をやります。

「ウォールデン」は1854年に出版された。ヘンリー・デビット・ソローは1845年7月から2年2か月間、ボストンの郊外、コンコードにあるウォールデン池の岸辺に自分で小屋を建て独り住んだ。「ウォールデン」はその生活記録で、畑仕事をしながら観察した、ウォールデン池を含む自然の様子、動物、植物への愛情などが、みずみずしく輝く言葉で語られている。そして、それらは人生のあるべき姿の知恵、精神生活の大切さなどを、やさしく、にじむ様に教えてくれる。

若い人達には、ぜひ、ぜひ、ぜひ読んでほしい本である。日本語版では「森の生活ウォールデン」となっていて、僕は文庫本で持っている。

[ 2011/01/21 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。Esquire、The Financial Post 、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画「The Fly」「M Butterfly」にも作品提供する。サイトwww.tomionitto.com

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