のんびりアート

053「4510で勉強」

 

めったにない事なのだけれど、たま〜にイラストレーションの仕事を見たいと言って僕の所に来る人達がいる。全部が全部残っている訳ではないが、英文雑誌に掲載されたイラスト頁を切り取り台紙に貼り、それをラミネート処理したのが沢山手もとにある。それらを順を追って説明していて感じるのは、"ああ、ボクは仕事のイラストレーションを描く事でずいぶん勉強させてもらったなぁ"という事だった。とにかく、いろんなジャンルにテーマが広がっているのと、その時、その時代にとって、どちらかというと先取りの記事内容だったので、数年後、数十年後の"今"になってみるとそれが当たっていたり、そうでなかったり、そんな様子を見るのもおもしろかった。1980年代にやったイラストの内容、将来はミドルクラスがシュリンクするだろう…は当たったし、農業にコンピュータが使われるだろう…も当たり、シンボルやサインランゲージがますます多く使用されるだろう…も当たった。だが、トロント大学同窓会誌のカバー絵の内容、未来の燃料エネルギーは水素…は、まだやって来ないようだ!?

先月4月の新聞に"時代の終わり"の文字も大きく、キューバのカストロの写真が載っていた。政治的パワーを弟に渡したとの記事である。80才の半ば位と思われる顔写真は、懐かしいという気持ちを僕に起こさせた。と言うのも、彼の若い横顔を絵にかいているからなのだ。トロントにサタデー・ナイトという雑誌があって(今は無くなってしまった)、1984年1月号にキューバ革命25周年の記事で、革命成った59年に首都ハバナにいたカナダ人の体験談が掲載された。僕はその中に1頁と3分の1の大きさのサイズで、カストロの演説中に起こったらしいハプニングをイラストレーションに描いたのだった。地平線近くまでに埋めつくされた民衆の前に立つ戦闘服を着たカストロの後ろ姿の上半身。顔は横を向いていて、まさに、彼の肩にとまろうとしている白い鳩と目が合っている…空は青空。

小さな後悔もある…。「この白黒線画のドローイングをもとにしてイラストを描いて下さい」と出版社から渡された、空からのながめのアッパー・カナダ・カレッジの校舎全景図。僕はそれをベースに、窓わくまで描くという細かい描写でカラーイラストをやった。雑誌に掲載されて数週間後に電話がなった。「君は私のドローイングを使いましたね」と電話の声。僕は一瞬考えたけれど、「コピーライトの事は出版社と話し合って下さい」と言うしかなかった。すぐ出版社に電話し事情を伝えるとOKを取っているから問題なしとの事。雑誌にもクレジットが入っている。…ケトルさん、もしあの時お互いに話が通じていたら、それぞれの45 10(しごと)を見せ合って笑いあっていたかもしれないですね…それが残念でした。

[ 2011/05/20 ]

日塔 富夫
トロント在住のイラストレーター。Esquire、The Financial Post 、Saturday Night、Toronto Lifeなどの表紙、挿絵を手がけたほか、映画「The Fly」「M Butterfly」にも作品提供する。サイトwww.tomionitto.com

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