Akiko Yano

シンガーソングライター 矢野 顕子

その瞬間を一緒に…

トロントで楽しむ生演奏の醍醐味

(2011年02月04日記事)

温かく、澄んだ高い声。その独特の声が、耳馴染みの良い音に載せられて語る。何故かほっとした気分になる、陽だまりのような矢野顕子さんの音楽は、たとえ彼女のCDを持っていない人でも、テレビのコマーシャルなどを通して耳にしたことがあるはずだ。「天才少女あらわる」と言われた18歳での衝撃的なデビューから30年間以上、常にトップアーティストとして楽曲を発表し続けているシンガーソングライターであり、ピアニスト…そんな説明はきっと不必要だろう。

その矢野顕子さんが、来月12日、トロントの日系文化会館でスクープ・オン・サムバディ(Scoop On Samebody)のお2人とジョイント・コンサートを開催する。日系文化会館からスケジュールが発表された直後にチケットを手に入れ、楽しみに待っている方も多いはず―今回は、コンサートが待ちきれない皆さんへ、渡加を控えた矢野さんからメッセージを頂くことができた。

現在は、ニューヨークを拠点にして制作活動を続けている矢野さん。電話の向こうから、「こんにちは!」と、あの高い声が聞こえる。トロントを訪れるのは初めてだとのことで、日系文化会館でのコンサートを楽しみにしていると話してくれた。

「初めてのところだから…という理由で極度に緊張することはないです。楽しみなことの方が多いですね。
でも、(コンサート会場にいらっしゃる)お客様の割合、日本人の方が多いとか、日本人以外の方がどのくらいいらっしゃるのかな、という割合は気にします。それによって曲目も変わりますし…。例えば、お子さんが会場にいらっしゃるな、と分かったら、子どもが喜ぶ曲を入れたりするんです」

自然体で矢野さんらしいコンサートの作り方だ。お話ししながら、ふと、どこかで見た彼女のコンサート映像を思い出した。印象的だったのは、彼女の本当に楽しそうな笑顔。ピアノと共に、時には演奏する指を止めて歌う矢野さんは、カメラ越しに見ていてもとても気持ちが良さそうだった。歌うこととピアノを演奏することは、彼女の中でどのように共存しているのだろうか。

「歌を歌うことと、ピアノを弾くことって(私の中で)どこかで繋がっているんです。両方やるから大変だと思ったことは一度もなくて、ピアノで表現できないところは歌が担当。そして、歌が出来ないところはピアノで…という感じなんです。例えば、歌では和音をつくることができないので、そこはピアノ部門が担当するというんでしょうか、そういう感じなので、どこかで切れ目があるわけではないんですよね」

では、ポップなのに懐かしい感じがするその楽曲のルーツはどこだろう?矢野さんはすこし考えてこう言った。

「うーん、そうねぇ。いっぱい学んできた、というのが理由かな、と思います。小さい時にクラシックの音楽から入ったので、系統立てて学んだのはクラシック音楽ですが、それから10代の割と早い時期にジャズが好きになったんです。ジャズは誰かに習ったわけではなく個人的に勉強をしました。それと同時期くらいに、ポップを始めました。ラジオを聴いていましたから…。
だから、特定の何かに影響されてそのジャンルに留まるということがなかったんですね。そうやって沢山の音楽を学んで、それでいろんなものが見えてきて、今(の音楽)に至るんじゃないかな、と思います」

矢野さんはシンガーソングライターとしての活動だけでなく、映画音楽を引き受けたり、「ホーホケキョ となりの山田くん」(99)や、最近では宮崎駿監督の映画「崖の上のポニョ」(08)などで声優に、そして雑誌に連載していたコラムが本となって出版されるなど、音楽の分野に限らず、幅広い活動をしている。

矢野顕子 & Skoop On Somebody
ジョイントコンサート

独特の歌声と繊細なピアノで魅了する矢野顕子と、R&B・ゴスペルのリズムが心地よいスクープ・オン・サムバディ(www.skoop.jp)。2組の楽曲を一夜で楽しむことができる豪華コンサート。チケットは売り切れ必至!

日 時:3月12日(土)19時
場 所:日系文化会館(6 Garamond Court)
入場料:一般$35.40、JCCC 会員$30.97(税別)
連絡先:416-441-2345
サイト:www.jccc.on.ca

「(音楽以外の)ほかの活動については、いろんなきっかけで声をかけて頂いたのでやらせてもらったんですが、やってみると面白いんですね。
でも、今やってることでわりと手一杯なので(笑)、ほかの分野に挑戦するということはあまり考えていないです。年齢的にも、自分の健康を維持して、そして技術を維持していくのが課題ですね。それが一番の関心です」

そう語りながらも、昨年から歌手の森山良子さんとユニット『やもり』を始めるなど、精力的だ。

「『やもり』に関しては、本当に面白そうだというのが(始めた)きっけかけです。どなたとでも、何でも出来る、という訳ではなくて、一緒にやって意味のあることを、この方と一緒にやれば出来るという確信がなければやりません。『やもり』は結局、その通りになってきましたので、もくろみが当たりましたね(笑)。
森山良子さんという素晴らしいシンガーと一緒にやったら絶対いいだろうな、と思ったんです。私自身も楽しんでやっているユニットです」

最後に、トロント公演を楽しみにしている読者の皆さんへ、矢野さんからのひと言をいただいた。

「(楽曲は)やっぱり、その日に歌いたいな、と思った曲を歌わせてもらうことになると思います。でもそれは、私がいつもやりたいと思っていることですから、皆さんにもきっと喜んでもらえるのではないかな、と思います。
生演奏、ライブというのは、その場限りのもので、その時にしか出来ないものですから、是非、その瞬間を私と一緒に楽しんでいただきたいですね。CDなどで楽曲を聞いてくださっている方やコンサートに来ていただいたことがある方でも、その時とまったく同じ演奏は、絶対にできないんです。だからライブの時にしかない、その瞬間を皆さんとシェア出来たらいいな、と思います」

矢野顕子さんのコンサート、チケットはすでに売り出し中。外の寒さを忘れさせてくれるひと時を求めて、そして、日ごろのストレスを和らげてくれる瞬間を求めて、日系文化会館に向かおう。

〈インタビュー/西尾 裕美〉

Biography

やの あきこ

3歳よりピアノを始め、高校時代からセッションミュージシャンとして音楽活動を始める。76年、アルバム「ジャパニーズガール」でデビュー。81年にシングル「春咲小紅」が大ヒット。以来、ヒット曲多数、テレビコマーシャルなどに提供されている楽曲も多い。また、ピアノの弾き語りによる「出前コンサート」、昨年より森山良子とのユニット「やもり」を結成するなど、ユニークな活動を精力的に続けている。
www.akikoyano.com

 
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