Sumie Maeda

女優・ダンサー 前田 純枝

運を呼び寄せる
固い決心で掴んだ「今」

ブロードウェイの舞台で活躍する日本人女優

(2011年03月18日記事)

ニューヨークのマンハッタンを南北に走る目抜き通り、ブロードウェイ。今ではミュージカルの代名詞となったこのエリアは、世界中の多くの俳優、女優、ダンサー、アーティストが『いつかこの地の舞台に!』と夢に見る憧れの地だ。
そのブロードウェイのダンスミュージカル『ホット・フィート』に出演した日本人女優・ダンサーの前田純枝さんが、今度はクラシック・ミュージカルの『サウス・パシフィック(南太平洋)』の舞台で活躍している。今回は、ツアーとしてトロントで公演中の同ミュージカルで、現地民の娘リアット役として舞台に華を添える前田さんにお話を伺った。

女優として舞台に立つことがやはり、日本からニューヨークに来た時の夢だったんですか?」

「実は、ダンスがやりたくてニューヨークに来たんですけど、いろいろ機会に恵まれて女優の仕事をするようになりました。日本で、母と叔母がバトントワリングのスタジオをやっていたので、2歳からバトンを習っていました。そのバトンのためにバレエのレッスンなどを始めて、そこからダンスへ興味が移っていったんです」

小さい時からということは、お母様の影響でバトンを始められたんですね

「やらされてたんですよ(笑)。私は大会で競争するより、ステージの上で踊って、パフォーマンスする方が好きでした。世界大会に出て、いろんな国に行くこともあったので視野は広がりましたが、あまり大会とかは好きになれなくて…。 自分で初めて何かを『やりたい』って言ったのは、高校の時です。ヒップホップのクラスに行きたいと言いました。
ヒップホップは、大学に行くために東京に出てからもずっとやっていました。その時はナイトクラブみたいなところで踊ったりしてましたけど、それでは物足りなくなって…Zeebraとか、DOUBLEといったミュージシャンのバックダンスをしたり、ミュージックビデオに出たりしていました。そこから、大学でみんなが就職活動をしてる時に、私は就職活動はしない、ニューヨークに行こう、ブロードウェイに出たい! って…」

そんなことして大丈夫? って言われませんでしたか?

「大丈夫どころじゃないですよ(笑)。親にはすごく反対をされたんですが、学校ならっていうことでカレッジに申請したんです。最初からダンスの学校に行きたいって思っていたんですが、それはだめだと言われて…。でも、ニューヨークに引っ越して、学校の学費を払わなきゃいけない日に払わなかったんですよ。親には、日本で大学は卒業したし、もう(学校は)行きたくない、って言いました。やりたいことが決まっているのに、何でこんなに遠回りしなきゃいけないの?って。
その後、学費を払ってないので学生ビザもないし、3か月で日本に帰って考えました。でも、考えても、やっぱりニューヨークに戻ってブロードウェイ・ミュージカルに出たい、という気持ちは変わりませんでした。だから、私が生まれた日からおばあちゃんがちょっとずつ積み立てていてくれた、"お嫁入りの時のお金"っていうんでしょうか? それをください! って言って、そのお金をダンス学校の資金に充てたんです。親には相当迷惑をかけましたね」

もしブロードウェイがだめだったらどうするつもりだったんですか?

「だめに出来ないから必死です。でも、ニューヨークの都会で何も贅沢は出来ないし、オーディションに行ってもまだワーキングビザがない状態だったから"ダンスができる"というだけでは仕事がもらえない状態に陥りました。アメリカでは私は外国人ですからね。だから、あの頃はすごい大変でした…、いや、つい最近まで大変だったかな(笑)」

前田さん出演のミュージカル
「South Pacific」

日 時:上演中〜3月20日(日)
場 所:Toronto Centre for the Arts
            (5040 Yonge St.)
入場料:$45、$56、$77
連絡先:416-644-3665
サイト:www.dancaptickets.com
            www.southpacificontour.com

最初にニューヨークでもらったお仕事はどうやって手に入れたんですか?

「オーディション情報ばかりが載ってる新聞があるんですよ。その新聞を毎日のように読んで、自分ができそうなもの…だけじゃなく、だめそうなものも(笑)全部行った!
そのオーディションのうち、アフリカン・アメリカンのモダンダンスカンパニーに気に入ってもらうことが出来ました。そのカンパニーは寛大に学生の私を受け入れてくれたし、バトントワリングで世界大会に行ったこともうまく働いて、アーティストビザが取れたんです。そこでは日本では学べないようなモダンダンスのテクニックを教えてもらいましたね」

実力もそうですが、成功するためには他の要素も大事ですよね

「本当にそうですね。どれだけの人がブロードウェイにトライしてるか、そして、その中で舞台に立てるようになるには運もあるだろうし、実力と、あとサバイバルスキルじゃないですけど、そういうものが必要になってくると思います」

『サウス・パシフィック』では、英語が話せないリアットの役ですね。台詞がほとんどない分、逆に大変なのでは?

「大変です!(笑)話さないし、出るシーンもあまりない。でも、登場するのは、すごくインテンスなシーンなんです。思ってることを言葉に出来るなら楽です。例えば怒ってる時に『怒ってるんだから!』って言ったらすぐに伝わりますよね。でも、そういう感情を言葉を使わないで表現しなきゃいけないんですよね」

最後に、ミュージカル『サウス・パシフィック』の魅力は?

「沢山ありますけど、この話はすごく昔の話で、その頃には人種差別も色濃くありました。このプロダクションの監督はその状況も盛り込んでいます。だから、シービーの男の子達(アメリカ海軍の建設工兵隊)が踊ってる時も、黒人と白人とは完全に離れてるんですよ。それが事実だったんですよね。マーチしてる時もそうです。リハーサルから白人のシービー、白人のオフィサー、白人のナース、黒人のシービー、アイランドの人たち、ってグループに分けられました。リハーサルの時からそういうことをする人はあまりいないですね。このミュージカルには有名な曲が沢山あるので、年配の方で(昔、上演された)最初のプロダクションを観た人も来て下さいますが、『曲が好きだから来たけど、実際に話がこんなにディープで、こんなにも人種差別的なことが浮き出て見えるとは思わなかった』と、新たな発見をして頂いています。
また、ツアーのミュージカルには珍しく、フルオーケストラなんですよ。最近はシンセサイザーを使った軽い感じの音楽が多いですが、オーケストラの音とともに舞台に上がれるのは本当にラッキーだと思いますね」。

〈インタビュー/西尾 裕美〉

Biography

まえだ すみえ

広島出身、ニューヨーク在住。『South Pacific』(09〜ツアー中)では、リアット役として出演中。ミュージカル『ホット・フィート』でブロードウェイ・デビュー。その他、オフ・ブロードウェイの『Kismet(Encores!)』、『Flower Drum Song』をはじめ、映画やテレビドラマなどに出演多数。全日本バトン・トワリング選手権大会優勝、イタリアで開催された世界バトン・トワリング選手権大会では銅メダルに輝くという経歴も持つ。

 
▲PAGE TOP