Nuit Blanche

オールナイト・アートは静寂を破って

(2010年10月01日特集記事)

2002年にパリから始まり、06年からはトロントでも開催されてきたNuitBlancheは芸術の大祭。フランス語で「夜」を表すnuitと「白」を表すblancheで太陽の沈まぬ「白夜」、転じて「徹夜」を意味する。普段はアートに触れる機会の少ない人も含め、多くの人に芸術に触れてもらおうと日没から明け方まで、街中に展示される作品が無料で楽しめるという催しだ。ギャラリーや美術館だけでなく、いつもは静かな路地でさえショーウィンドウの役割を務める。市内を大きく3つのゾーンに分けて展示される作品は130を超え、ヤングストリート沿いはブロアからフロントストリートまでが歩行者天国となる。

ダウンダウン北部のゾーンAでは、ライティングを用いた作品をメインに、光と闇で刻む31の夜の芸術を展開する。また、ダウンタウン中心部から東部のゾーンBは40の作品で観客の訪れを待つ。アートとポップミュージックの融合をテーマにした中心部と、過去未来の「時間」の融合を演出する東部。時を忘れてアートを楽しむ一夜のイベントにぴったりの趣向だ。最後に、ダウンダウン南部から西部に及ぶ最も広いエリアをカバーするのがゾーンC。ここでは、心と身体と大地の息吹や儚さをたどる、一期一会の計62展示が披露される。

おすすめ作品はいくつもあるが、そのうちの一つは、ゾーンAの"Iskootao2010"だ。北米先住民クリー族の言葉で「火」「女性の心臓」を意味するIskootaoをテーマにした作品は光と音楽が交錯するパフォーマンス。カナディアン・シールドと呼ばれる約25億年前の地層の岩盤が脈動する心臓に変わる様子を見つめるもので、その力強さに心震える。

また、ゾーンCの"Endgame2010"は静かな路地に立つ建物と建物の狭間に巨大な道化バルーンを押し込めた展示。メインストリートを華々しく彩ったビルボードがリサイクルされ、路地裏で道化となる末路を辿ったその佇まいはインパクト大。笑いを誘うはずなのにどこか緊張感を持って私たちのイマジネーションをかき立てる。

とにかく、一晩かけてもまわり切れないアートの数々。地下鉄やストリートカーも特別スケジュールでこのイベントをバックアップするが、何しろ範囲が広い!サイトで見たい作品をチェックするか、各ギャラリーで入手できる公式パンフレットで事前にどう廻ろうかを考えておこう。

いつもとは違う熱気をはらんだ秋の夜長は、きっとクリエイターと観客双方の情熱が溢れているせい。少し睡眠をとってから、秋の街へ繰り出そう。

Iskootao

(上の写真)
by Kent Monkman and Gisele Gordon
【会場】 Zone A
The Village of Yorkville Park
(Cumberland St. and Bellair St.)
【手法】Performance Art
Kent Monkman, Miss Chief Eagle Testickle, 2008

Information

Nuit Blanche
【日 時】 10 月2 日(土)18:57 〜夜明け
【会 場】 トロント市内参加各所
【入場料】 無料
【サイト】 www.scotiabanknuitblanche.ca

交通機関
■地下鉄
通常午前1 時30 分ごろに最終となる地下鉄だが、この日は以下の区間のみ終日運行する。
・Bloor-Danforth subway:Keele 駅〜 Woodbine 駅間
・Yonge-University subway:St. Clair West 駅〜 Eglinton 駅間
■ストリートカー・バス
TTC が運行しているブルーナイトバス(24 時間運行バス)は通常通りに運行。これに加えて、いくつかのルートでストリートカーとバスがオールナイト運行される。

お得情報
T TC ではNuit Blanche のためにオールナイトで使用できるディ・パスを発売している。1 枚10 ドルで10 月2 日から3 日の9:00 まで使い放題。1枚で大人2人、子ども4人まで使用可能だ。

ゾーンA(Downtown North)
ヨークビルを中心に北へ広がるこのゾーンにはROM、国際交流基金トロント、カサロマなどでの展示も含まれる。地下鉄での移動が便利。
ヤング-ブロアの北東角にインフォメーションセンターが設置されている。

ゾーンB(Downtown Central / East)
市庁舎やライアソン大学などヤング&ダンダスをメインに、ディスティレリー地区までカバーする。あらかじめストリートカーでディスティレリー地区に移動しておき、ダウンタウンへ戻るようにまわると効率がよい。ヤング- ダンダス広場にインフォメーションセンターがある。

ゾーンC(Downtown South / West)
ヤングストリート沿いのキング、クイーン間を中心にクイーンストリート・ウエストなど、ヒップなエリアを含む広域ゾーン。ユニオン駅から西行きのストリートカー、あるいはダファリン駅、オシントン駅から南行きのバスを利用しよう。インフォメーションセンターはキングストリート・ウエストのBay Adelaide Centre のArnell Plaza に。

Endgame( Coulrophobia)

by Max Streicher
【会場】 Zone C
67 Yonge St. と69 Yonge St. の間
【手法】Vinyl (Recyled Billboards)
Max Streicher, Endgame (Coulrophobia) , 2010

Interactive landscape Dune

by Daan Roosegaarde
光ファイバーの森の通り抜けはときに「テクノの国のアリス」と評される。通り過ぎる人の音と動作で光を放つ大量のファイバー。自然とテクノロジーの融合体とたわむれよう。
【会場】 Zone A
Bay Station(Bay St. 入口側)
【手法】 New Media
Daan Roosegaarde, Interactive landscape Dune, 2007-2010
Photo credit: Studio Roosegaarde

The Endless Pace(variation for 60 dancers)

by Davide Balula
60 人のダンサーが秒を刻み分を作り時をなす「人間時計」はパフォーマンスである以上に「時の流れ」そのもの。止まることなく迫る「時」の無常さと、人の手で表現される生きた時間を感じて。
【会場】 Zone C
Commerce Court Courtyard( 25 King St. W.)
【手法】 Performance Art
Davide Balula, The Endless Pace (variation for 60 dancers), 2009

Later That Night At The Drive-In

by Daniel Lanois
音と映像のオアシスに作り変えられた夜の広場で、マルチチャンネル、マルチスクリーンによるメディア体験を。音楽と光が生み出す世界が、万人に創造と可能性の無限の広がりをもたらす。
【会場】 Zone B
Toronto City Hall(100 Queen St. W.)
【手法】 Multimedia Installation
Daniel Lanois, Later That Night At The Drive-In, 2010
Photo Credit: Adam CK Vollick

Allegory for a Rock Opera

by Derek Liddington
伝説のアメリカンロッカー、ブルース・スプリングスティーンの代表的な曲を用いた風刺に富んだインスタレーション。労働者階級の報われない生活や病んだアメリカについて歌った彼の切なくも力強いメッセージが伝わってくる。
【会場】 Zone B
City TV & Omni Television(33 Dundas St. E.)
【手法】 Installation / Sculpture / Performance Art
Derek Liddington, Allegory for a Rock Opera, 2010

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